住宅ローン 選び方住宅ローン10年固定の特徴と賢い選び方を徹底解説
変動金利と固定金利の中間的存在。住宅ローンの「10年固定」ってどう?住宅ローン10年固定の特徴と賢い選び方を徹底解説
住宅ローンを借り入れる際に、多くの方が悩むのが、変動金利と固定金利のどちらを選ぶべきか、という点ではないでしょうか。
金利が低い一方で、将来の金利上昇リスクがある「変動金利」と、金利上昇のリスクを限定できるものの、変動金利と比較すると金利が高い「固定金利」。
それぞれに一長一短があるため、最後まで選択に迷うことも少なくありません。
このように判断がむずかしい変動金利と固定金利の中間的な位置づけとして、多くの金融機関が提供しているのが、10年固定の住宅ローンです。
完全な固定金利でも変動金利でもないぶん、中途半端な印象を持たれることもある10年固定ですが、特徴をしっかり把握し、デメリットについて対策をしておけば、多くのメリットがあることも事実。(※実際に固定金利を選ぶ方の多くが、10年固定を選ぶ傾向があるため、多くの金融機関が優遇金利を提供するなど、力を入れている商品でもあります。)
今回は、変動金利や固定金利と同じくらいメジャーな住宅ローン商品であるにもかかわらず、賢い使い方などが意外に知られていない、住宅ローンの10年固定について解説します。
目次
住宅ローン10年固定とは?まずはその特徴をチェック!
住宅ローンの「10年固定」とは、住宅ローンを組み、返済がスタートした当初の10年間の金利が固定される住宅ローンです。
たとえば、期間35年返済の住宅ローンを組む場合であれば、当初10年間は「優遇金利」と呼ばれる所定の金利が適用され、11年目からは、変動金利や固定金利といった任意の金利タイプを選ぶことになります。
10年固定の最初の10年間に適用される優遇金利は、名前の通り、金融機関が本来提供する住宅ローンの金利(基準金利)から大幅に優遇されているうえ、固定金利なので、この10年は金利が変動することもありません。
ただし、11年目になると、優遇金利の適用期間は終わり、金融機関の定める「固定期間あけの金利」が適用されるようになります。
ほとんどの場合、固定期間あけの金利は、当初10年の金利よりも優遇幅が小さくなるため、11年目からは住宅ローン金利が上昇する(返済額が増える)可能性が高くなるのです。
※一部の金融機関は当初10年固定期間が終了すると、自動的に変動金利に切り替わる仕組みを採用しています。改めて固定金利の利用を希望する場合は、当初10年固定期間が終了する前に金融機関へ相談しましょう。
これだけでは、10年固定を積極的に選ぶメリットが見えにくいように感じますが、11年目の固定期間あけ金利の水準は、金融機関によって異なります。
銀行によっては専用の「固定期間あけの金利」がなく、11年目に金利タイプを選び直す際は、その時点の新規借り入れと同じ金利が適用される住宅ローンもあります。
住宅ローン10年固定の固定期間あけ金利を比較
優遇金利(当初10年) | 固定期間あけ金利(11年目以降) | |
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SBI新生銀行 | 年0.900% | 選択した金利タイプのその時点の基準金利から-年0.7% 【例】10年固定:年1.30% (2019年6月金利) |
三井住友銀行 | 年1.10% | 選択した金利タイプのその時点の基準金利から-年1.4% 【例】10年固定:年1.90% (2019年6月金利) |
また、10年固定では、優遇金利の終わる10年のタイミングで、他の金融機関に借り換える方法も一般的です。
11年後の金利水準を予測することは不可能ですが、現在のように住宅ローン金利が歴史的な低水準をキープしている場合は、他行の住宅ローンの金利が現在の金利よりも優位性がある可能性があるので、借り換えるのも選択肢の一つ。
固定期間あけの金利と比較して低い金利を提供している金融機関がある場合は検討してみましょう。
住宅ローン10年固定のメリットとデメリット住宅ローン10年固定の特徴と賢い選び方を徹底解説
住宅ローン10年固定には、前述の通り、各家庭の資金計画によってプラスにもマイナスにも働く、さまざまな特徴があります。
賢い使い方を考える前に、住宅ローン10年固定のメリットとデメリットを整理しておきましょう。
住宅ローン10年固定のメリット
- 当初10年間、優遇金利の恩恵を受けることができる
- 当初10年間、金利の変動リスクを避けることができる
- 10年固定の優遇金利は、他の期間の住宅ローン金利と比べて低い(2019年6月現在)
10年固定のメリットは、返済開始からの10年間は、一般的な固定金利よりも低い水準の金利(優遇金利)が固定金利として適用される点です。
また金融機関の多くが住宅ローン利用者のボリュームゾーンである10年固定に力を入れており、他の借り入れ期間よりも有利な金利を提示している点も住宅ローン10年固定の大きな魅力と言えるでしょう。
借り入れから10年間は住宅ローンの金利について気を揉まなくてすむため、借り換えを視野に入れて貯金をする等、次のステップを決めるまでの時間を確保することができる点も嬉しいポイントです。
住宅ローン10年固定のデメリット
- 固定期間が終了すると、金利が見直されるため、返済計画を再度検討する必要がある
- 11年目に住宅ローンを見直す(借り換える)場合は手間とコストがかかる
一方、10年固定のデメリットとしては11年後に金利の見直し(固定期間あけ金利の適用)が行われる点が挙げられます。
この場合は、金利が上昇し、返済額が増額になるケースが多いため、返済計画を見直す必要が出てきます。
また他の住宅ローンに借り換える場合も、事務手数料や抵当権の抹消、登記、司法書士の費用などがかかるため、無料という訳ではありません。
11年目に一定の時間と手間、費用が掛かる点は、住宅ローン10年固定のデメリットと言えるでしょう。
住宅ローン10年固定の選び方と賢い使い方住宅ローン10年固定の特徴と賢い選び方を徹底解説
シンプルな構造の変動金利・固定金利と比較すると、住宅ローンの10年固定は、やや、しくみが複雑です。
人気の高い商品のため、10年固定を取り扱う金融機関は多いものの、それぞれの金融機関で異なる点も多くあります。
10年固定を失敗せずに利用するための選び方・使い方を見てみましょう。
住宅ローン10年固定の選び方
- 当初10年固定金利が低いものを選ぶ
- 「優遇金利」に加え、「固定期間あけの金利」も重視
- 繰り上げ返済手数料が無料のもの、団信が充実しているものを選ぶ
最初の10年間で、できる限り住宅ローンを返済していきたい場合は、当初10年の優遇金利ができる限り低いものを選ぶのがベターです。
10年固定の金利水準は、変動金利には及ばないものの、フラット35や民間金融機関の全期間固定住宅ローンと比較すると、全体的に低め。
低金利の恩恵を受けられるうちに、繰り上げ返済などを活用し、返済していくと良いでしょう。繰り上げ返済を上手く活用し、総返済額を圧縮しておけば、固定金利明けの金利上昇リスクを抑えることができます。
一方、返済期間をめいっぱい使って少しずつ返済していきたい場合は、優遇金利に加えて、固定期間あけの金利も重要です。
11年後の住宅ローン金利がどのようになっているかは、誰も正確に見通すことはできませんが、固定期間あけの金利の優遇幅(基準金利からいくら引き下げられるか)は、金融機関のホームページで確認することができます。できるだけ優遇幅の大きい金融機関がおすすめです。
住宅ローン10年固定の選び方
- 返済期間中も金利動向を定期的にチェックしておく
- 現在の金利やサービスに不満を感じたときは借り換えを視野に入れる
10年固定の住宅ローンを賢く利用する方法は、上記の様な特徴・メリット・デメリットを理解したうえで、自分なりに金利の動向をチェックし、万が一の際は、借り換えを視野に入れておくことが大切です。
前述の通り、10年固定は、当初10年の固定期間が終了する前に借り換えるケースも決して珍しくありません。
つねに「借り換え」という選択肢があることを意識したうえで、現在の金利動向がどうなっているかを調べ、固定期間あけの金利の適用を受け入れ、そのまま同じ金融機関での借り入れを継続するか、他の金融機関に借り換えるかを決めましょう。
10年固定に強いおすすめの住宅ローン住宅ローン10年固定の特徴と賢い選び方を徹底解説
10年固定はさまざまな金融機関が、住宅ローンの主力商品として取り扱っています。
ここでは、金利の低さや契約者サービスに定評がある、おすすめの10年固定をピックアップしてご紹介します。
住信SBIネット銀行 住宅ローン(WEB申込コース)
特徴 | 大手のネット銀行「住信SBIネット銀行」が提供する住宅ローン。 10年固定は「当初引下げプラン」と「通期引下げプラン」の両方で提供。借り入れ直後の金利は「当初引下げプラン」のほうが大幅に低いが、固定期間あけの基準金利引き下げ幅は「通期引下げプラン」のほうが有利になる。 住宅ローン保証料・団体信用生命保険料・一部繰上げ返済手数料に加え、金利タイプの変更手数料も無料。 また、疾病が原因で就業不能状態となった場合に住宅ローンの返済をカバーする「全疾病保障」を無料で付帯できる。 |
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10年固定金利 |
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ソニー銀行 住宅ローン
特徴 | ソニーフィナンシャルグループのネット銀行「ソニー銀行」が提供する住宅ローン。 10年固定は、通常の「住宅ローン」に加え、変動金利を優遇する「変動セレクト住宅ローン」でも取り扱う。金利の引き下げ幅を比較すると、通常の住宅ローンのほうが有利。 ソニー銀行の住宅ローンには、独自の金利適用ルールがあり、10年固定の固定期間あけの金利は、その時点の新規借入時の金利と同一となる。他の金融機関のように、固定期間の前後で金利の引き下げ幅が変化しないため、借り換えの手間を少なくしたい場合に優位性がある。 住宅ローン保証料・団体信用生命保険料・繰上げ返済手数料は無料。がんと診断された場合に住宅ローンの返済額が半額になる「がん50%保障団信」も無料付帯する。 |
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auじぶん銀行 住宅ローン
特徴 | 三菱UFJ銀行 とKDDIが共同出資する「auじぶん銀行」の住宅ローン。 10年固定は「当初期間引下げプラン」と「全期間引下げプラン」の2種類を取り扱う。 「当初期間引下げプラン」は借り入れから10年間の金利が大幅に引き下げられ、「全期間引下げプラン」は借入期間中の引き下げ幅が固定されて全期間適用される。 住宅ローン保証料・団体信用生命保険料・繰上げ返済手数料、金利タイプの変更(固定金利再設定)手数料は無料。また、がんと診断された場合に住宅ローン残高が2分の1となる「がん50%保障団信」も無料で付帯する。 |
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10年固定金利(年利) |
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住宅ローンの10年固定は「変動」と「固定」の良いとこどり。特徴を知って上手に利用しよう!住宅ローン10年固定の特徴と賢い選び方を徹底解説
住宅ローン10年固定は、多くの金融機関が力を入れている商品だけに、当初10年間の優遇金利は、他の金利帯と比べても魅力ある水準に設定されています。
これまでのチャプターで解説してきたように、優遇金利は10年間の期間限定。11年目の固定期間あけにどのように対処するかによって、住宅ローン10年固定の満足度が変わってくると言っても過言ではありません。
10年固定を選択し、借り入れる際は、いずれは金利が変動する商品であることを意識し、契約を継続した場合と借り換えた場合のシミュレーション、その時点の金利の動向も加味した上で方針を練っておきましょう。
この心構えさえしっかりしていれば、10年固定が持つ低金利を享受し、総返済額を抑えることができ、本当に賢い住宅ローンマネジメントが可能になります。
10年固定のメリットを最大限に活かしつつ、デメリットを最小限に抑えるために、今回の特集も参考に、ご自身に合った10年固定の住宅ローンを見つけましょう!
おまけ住宅ローン10年固定の疑問に専門家が回答 Q&A
Q110年固定で借りると10年間で住宅ローンを返済しないといけないのでしょうか?
A110年固定で借りたからと言って、10年間で返さないといけない訳ではありません。この10年という期間は「10年間で返す」という意味ではなく、「10年間金利を固定する」という意味です。10年固定を利用するユーザーのほとんどが、借り入れ期間を35年に設定しています。つまり10年間返済が終わっても、残り25年間返済期間が残っている(※繰り上げ返済を利用すれば返済期間を圧縮可能)ということです。
Q210年固定で借り入れている期間に繰り上げ返済すべきでしょうか?
A2金融の専門家の中には、現在の住宅ローン金利は十分に低いので、繰り上げ返済する必要はないという方もいらっしゃいますが、筆者はこの意見には反対です。10年固定されている期間は良くても、10年後金利が現在のように低いとは限りません。10年間の固定期間明けの金利上昇リスクを回避するためには、できるだけ残りの返済期間を短くする必要があります。そのための唯一の方法が繰り上げ返済なのです。
万一10年後に金利が上昇していたとしても、残りの返済期間が少なければ何とかなります。住宅ローンの返済リスクに対応するためにも、無理のない範囲で繰り上げ返済を活用しましょう。
著者 長尾 尚子
フリーランスライター。得意分野は、育児・教育、住宅ローン、保険、金融、エンタメ等、幅広い。子ども3人を育児中のママでもある。
【資格】消費生活アドバイザー、FP2級