住宅ローン 選び方住宅ローンのAI審査を比較。そのメリットとデメリットとは
住宅ローンの審査にAI(人工知能)が活用されはじめている住宅ローンのAI審査を比較。そのメリットとデメリットとは
仕事や生活のあらゆるシーンでAI(人工知能)という言葉を聞かない日はありません。
すでに私たちの周囲で活用が進んでいるAI技術は、煩雑なデータ処理を自動化することによって、様々な業務の効率化に役立っています。
住宅ローンの分野でも、このAIを利用して住宅ローン審査の速度アップや精度アップを目指す金融機関が登場しはじめており、大きな話題になっています。
2017年11月には住信SBIネット銀行、2018年5月にはソニー銀行、同年10月には三菱東京UFJ銀行が、それぞれ住宅ローンの審査にAIを導入することを発表しました。
それでは、住宅ローン審査にAIが導入されると、どのような点が今までとは違ってくるのでしょうか?
今回は「住宅ローンのAI審査」にスポットを当てて、AIによる審査のメリット・デメリット、審査にAIを活用している住宅ローンとその特徴をご紹介します!
住宅ローンAI審査のメリット・デメリット住宅ローンのAI審査を比較。そのメリットとデメリットとは
- 住宅ローンAI審査のメリット
- 審査のスピードが速まる
- 金利や手数料が下がる可能性がある
- サービスが拡充される可能性がある
住宅ローン審査にAIが導入されると、審査のスピードは従来と比較して格段に速くなります。なぜなら審査の際に行われる複雑なデータ処理は、AIを活用し処理を自動化したほうが、はるかに速く、正確に行うことができるためです。この審査スピードのアップは、AIが住宅ローン審査を行う大きなメリットの1つと言えるでしょう。
また、審査のスピードが速まれば、万一、審査に落ちた場合でも、早めに他の住宅ローンの検討に移ることができるようになります。これも二次的なメリットと言えるでしょう。
さらに、それまで人が行っていた業務をAIに任せることができるようになるため、金融機関が人件費などのコストを下げられる点もAI審査のメリットです。その結果、利用者側においても「住宅ローンの金利や事務手数料などが下がる」「契約者向けのサービスが拡充される」といったメリットが産まれることが期待できます。
- 住宅ローンAI審査のデメリット
- 人の判断が入らないぶん、シビアに審査に落とされる可能性がある
- (審査に落ちたor通った場合の根拠を把握できない可能性がある)
その一方で、AIによる審査のデメリットとしては、融資可否の判断が機械的に行われる点が挙げられます。人による判断が介在しなくなるため、信用情報や資産情報といった自分のデータをAIが評価しない場合は、審査にシビアに落とされてしまう可能性もでてくるでしょう。
また将来的に、住宅ローンの審査に利用されるAI技術が、ディープラーニングなどに代表されるより複雑・高度なアルゴリズムを用いるようになった場合、審査基準がブラックボックス化され、審査に落ちた場合や通った場合の判断根拠を人のほうで把握できなくなる可能性も考えられます(※)。
- 現在の住宅ローン審査で用いられているAI技術は、主として、審査の根拠などが人にも理解可能なロジスティック解析等の「ホワイトボックス型」を採用。また住信SBIネット銀行は日立製作所と協力し、予測根拠が不透明になりやすかった従来のディープラーニングと比較して根拠がわかりやすく予測精度の高いアルゴリズムの開発を進めている。
住宅ローンのAI審査を実施している金融機関は?住宅ローンのAI審査を比較。そのメリットとデメリットとは
ソニー銀行 住宅ローン
特徴 | ソニーグループに属するネット銀行「ソニー銀行」が提供する住宅ローン。翌月の住宅ローン金利が当月の中旬に公表されるため、住宅ローンを検討中の利用者が金利等を比較しやすい。金利種類のスイッチング(変動→固定、固定→変動)も簡単に行うことができる。繰り上げ返済手数料・団信保険料は無料。がんと診断された場合に住宅ローンの返済額が半額になる「がん50%保障団信」を、金利の上乗せなしで利用できる。 |
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ソニー銀行のAI審査は? | ソニー銀行の住宅ローンでは2018年5月より事前審査(仮審査)においてAIによる与信判断を実施している。AI技術には、ソニー・グループが独自に開発した機械学習モデルを採用。個々に学習したモデルを複数組み合わせるアンサンブル法を利用することで、審査担当者の判断に近い精度の自動審査を実現している。従来は2~6日程度かかっていた結果判定を最短60分に短縮。 |
住信SBIネット銀行 ネット専用住宅ローン
特徴 | SBIホールディングスに属するネット銀行「住信SBIネット銀行」が提供する住宅ローン。住宅ローン保証料・団信保険料・繰り上げ返済手数料が無料。さらに、あらゆる病気・ケガを対象に、働けなくなった場合の住宅ローン残高がゼロになる「全疾病保障」が金利の上乗せなしで付帯できる。住宅ローンの契約手続きがWEB上で可能なため、契約書の署名や捺印が不要となるほか、契約書に貼付する印紙代(1,000万円~5,000万円の借入で2万円等)もかからない。 |
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住信SBIネット銀行のAI審査は? | 住信SBIネット銀行の住宅ローンでは2017年11月より住宅ローンの審査にAI技術を活用。AIには、複数の機械学習手法を混合することで予測精度を高めたアンサンブルモデルを使用している。また、2018年度中には日立製作所と共同開発中の新アルゴリズムを搭載したAI技術の導入も予定。仮審査は3営業日以内、本審査から融資実行までは必要書類の到着後1ヶ月~1ヶ月半ほどかかる。 |
三菱UFJ銀行 住宅ローン
特徴 | 日本三大メガバンクの1つ、「三菱UFJ銀行」が提供する住宅ローン。民間金融機関の住宅ローン取扱残高で11年連続No.1を誇る。申し込みから借り入れまでネットで手続きが完結する「ネット専用住宅ローン」も提供。変動金利と期間固定型の金利の低さに定評がある。団信保険料は無料。住宅ローン保証料や疾病保障は有料となるが、事務手数料は32,400円(税込)で固定されており、借入額が多いケースほど有利になる。 |
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三菱UFJ銀行のAI審査は? | 三菱UFJ銀行の住宅ローンでは、2018年10月よりリクルートの物件検索サイト「SUUMO(スーモ)」の利用者を対象に、AIによる住宅ローンの事前審査を実施している。スーモのサイト上で氏名や住所、勤務先、年収、借入希望額など約20項目を入力すると、最短15分で事前審査の結果がわかる。また、審査結果を踏まえての本審査の申し込みも可能。AIにはNECが開発した「異種混合学習技術」が活用されている。 |
コラムあわせてチェック!まだある、審査のスピードが速い住宅ローン
住宅ローンの中には、ペーパーレス化や信用情報の自動照会などを取り入れることで、すでに審査のスピードを大きくアップさせているものがあります。
これらの住宅ローンでは、事前審査の結果はおおむね当日中に判明する他、本審査も3営業日以内に結果がわかります。万一落ちた場合もすぐに次の住宅ローンを検討でき、住宅ローンを比較・検討するうえで大変利便性が高いと言えるでしょう。
auじぶん銀行
特徴 | 三菱UFJ銀行とKDDIが共同出資するネット銀行「auじぶん銀行」の住宅ローン。変動金利の低さに定評がある。日本の金融機関で初めて、住宅ローンの申し込みから契約までネットで完結する仕組みを実現。事前審査は最短当日、本審査は最短3営業日で結果が判明し、最短10日で契約を完了することができる。住宅ローン保証料・繰り上げ返済手数料・団信保険料・契約書に貼付する印紙代が不要。また、返済中にがんと診断された場合、住宅ローン残高が2分の1になる「がん50%保障団信」を金利上乗せなしで付帯できる。 |
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ARUHI フラット35
特徴 | 住宅ローン専門機関「ARUHI」の全期間固定型の住宅ローン。国内の金融機関が取り扱う「フラット35」において8年連続(※2018年5月17日時点)でシェアNo.1を誇る。事前審査は最短当日、本審査は最短3営業日で結果が判明。契約完了までは最短10日と、フラット35の中でも手続き面でのスピードが速い。また、物件の決定前に希望借入額の適正度合をチェックできる「家探し前クイック事前審査」は、運転免許証の画像をアップロードするだけで最短1分で結果が判明する。 |
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AIが審査をすると住宅ローン契約までの時間を節約できるコラム - 住宅ローンのAI審査を比較。そのメリットとデメリットとは
住宅ローン審査へのAI導入の流れは、今後も進んでいくでしょう。
米国と比較すると、与信審査におけるAIの利用について日本国内の金融機関は慎重であり、「予測根拠の不透明なモデルの使用を避ける」、「予測精度の高いアルゴリズムの構築を自前で行う」など、AIのブラックボックス化を避けようとしています。
しかし、すでにAI審査を導入した金融機関の多くは、審査期間が短くなり、人の負担も減るなど一定の効果が見られることも事実。導入が進めば、金利や手数料面で我々利用者が直接の恩恵を受けるシーンも増えるでしょう。
また現時点でも、審査のスピードが速い住宅ローンを候補に加えることで、従来程度の日数がかかる住宅ローンと審査のタイミングをずらし、金利や借入額などを効率的に比較することができます。
新規借り入れや借り換え等で、近いうちに住宅ローンを検討する可能性が高い方は、今回ご紹介したAI審査を行う住宅ローンも視野に入れつつ、ご自身の資金計画に沿った住宅ローン選びに役立ててみてはいかがでしょう。