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住宅ローンの金利上昇要因とその対策

はじめに住宅ローンの金利上昇要因とその対策

2018年に入り、住宅ローン金利は明らかに上昇しており、その傾向は2019年も変わりそうにありません。
住宅ローンの新規借り入れを検討している方はもちろん、借り換えを検討している方も金利上昇は気が気でないはず。
この金利上昇に立ち向かうためには、その要因を正しく把握することが大切です。そして要因が分かれば、その対策も当然見えてきます。

今回の特集は、住宅ローンの金利上昇要因とその対処法と題して、5つの金利上昇要因とその対策をご紹介します
住宅ローンの新規借り入れを検討している方はもちろん、住宅ローンの借り換えを検討してみる方も是非チェックしてみてください。

住宅ローンの固定金利の上昇要因住宅ローンの金利上昇要因とその対策

固定金利は日本国債10年物の金利に注目

住宅ローンの金利上昇要因とその対策

住宅ローンには変動金利と固定金利がありますが、実はこの2つの金利上昇要因は異なります。まずは住宅ローンの固定金利の上昇要因を見ていきましょう。

固定金利の金利上昇要因になるのは、日本国債10年物金利の動向です。短期金利はもちろん、中期金利、長期金利に関しても日本国債10年物の金利をベンチマークに、金利が変動します。金利は原則として、期間が短いものほど金利が低く、期間が長いものほど金利が高くなります。

つまり住宅ローンの固定金利は、日本国債10年ものをベースに、金融機関が金利を上乗せし、期間が短いものは低く、期間が長いものは高く設定していると考えれば良いでしょう。

以下は過去5年間の日本国債10年物の金利です。興味がある方は是非チェックしてみてください。2016年6月がマイナス金利のピーク、2018年夏を起点に、金利が明確に右肩上がりになっていることがわかります。

変動金利は短期プライムレートに注目

次は住宅ローン変動金利の上昇要因です。変動金利は固定金利とは異なり、日本国債10年物に連動する訳ではありません。その証拠に2018年夏を起点に固定金利は上昇していますが、変動金利に関してはほぼ変動していません。

では変動金利は何をきっかけに上昇するのでしょうか?住宅ローンの変動金利は、短期プライムレートと呼ばれる指標をベースに変動します。短期プライムレートとは、金融機関が、財務体質が良好で返済不安が全くない一部上場企業などに短期間貸し出す金利のこと。

以下はみずほ銀行の最新の短期プライムレートです。

2018年11月時点での表示は1.475%となっており、じつはこの金利は2009年1月9日から変わっていません。
この金利が店頭表示金利となり、ここから1%程度の優遇金利を設定することで、現在多くの金融機関が変動金利で借り入れの際、提示している0.5%以下の変動金利が実現している訳です。

米国債の金利動向

ここまでは日本国内の金利上昇要因を解説してきましたが、実は日本の住宅ローン金利が上昇しているのは、その他にも理由があります。

その要因の最たるものが米国債の金利動向です。日本は国際社会の一員であり、株にせよ、為替、国債の金利にせよ、日本国内の要因だけで決まっている訳ではありません。世界最大の経済大国で世界中の景気に大きな影響を与える米国債の動向によって、日本国債の金利も一定の影響を受けます
米国は先進国の中で、いち早く量的緩和政策を解除しており、米国債10年もの金利はここ数年で大幅に上昇。2018年夏以降には3%を超えており、日本国債の金利上昇の要因になっています。

短期プライムレートに関してはまだ影響を受けていませんが、長期金利が上昇を続ければ短期プライムレートにも必ず動きが出てくるはずです。
住宅ローンの新規借り入れ、または借り換えを検討されている方は、日本国債の動向に、米国債が影響を与えるということも憶えておくと良いでしょう。

日本国債10年、短期プライムレートは日銀の政策次第

住宅ローンの金利上昇要因とその対策

ここまでは固定金利と変動金利が、それぞれ日本国債10年、短期プライムレートに影響を受けることを解説しましたが、この2つの指標が決まる要因は何なのでしょうか?
ここで登場するのが、日本の政策を決める通過の番人「日本銀行」、通称日銀です。

日銀は日本の経済状況をウォッチしながら、政策金利と呼ばれる短期金利を決めます。この対象となる金利は国によって異なり、日本では無担保コール翌日物レートが、日銀が決定権を持つ金利です。この金利をベースに銀行は市中での貸出金利を決めます。つまり、変動金利は無担保コール翌日物レートに最も大きな影響を受けるのです。
長期金利に関しては、日銀が金利の誘導目標を設定しており、この数値によって日本国債10年物が変動します。日銀は2018年7月末に行われた金融政策決定会合で約1年半ぶりにこの誘導目標を変更、従来までの0から0.1%から、0から0.2%に変動幅を確定しました。

2018年夏を境に金利が急上昇しているのはこのためです。

住宅ローンの金利上昇は、日銀の政策と切っても切り離せない関係にあることは間違いありません。

要注意!金利は期待値で上昇する

住宅ローンの金利上昇要因の最後にご紹介するのは、金利は政策が変更されたという事実だけで上昇するのではなく、期待値によっても上昇するという事実です。

例えば現在の住宅ローン当初固定10年の金利が1%だったとします。ただ世界中の金利が上昇しており、日本の物価も徐々に上昇していたとします。この場合、日銀が金融政策を変更しない限り住宅ローンは上昇しないのでしょうか?

答えはNoです。

住宅ローン金利を最終的に決定するのは、金融機関です。金融機関が今後金利が上昇する可能性が高いと判断すれば、日銀が金融政策を変更する前に、固定金利も変動金利も上昇する可能性があります。

住宅ローン比較では毎月有力な金融機関の住宅ローン金利の動向を調査していますが、ネット銀行はもちろん、メガバンクの間でも住宅ローン金利の設定が同じになることはまずありません。
各金融機関はそれぞれが金利の将来予測を行ったうえで、住宅ローン金利を毎月決めています。
将来の期待値が上向きになった場合、各種要因を無視し、住宅ローン金利が上昇する可能性があるということを憶えておきましょう。

住宅ローン金利上昇時の対策住宅ローンの金利上昇要因とその対策

住宅ローン金利上昇時の対策 その1
金融機関の対応のギャップを突き、住宅ローンを借り入れる(借り換える)

住宅ローンの金利上昇要因とその対策

では住宅ローン金利の上昇にどのように備えれば良いのでしょうか?住宅ローン比較 編集部では、リーマンショックのような金融危機が再び起こらない限り、2019年も金利の上昇傾向が継続すると考えており、住宅ローンの利用を検討するなら、早ければ早いほうが良いというスタンスです。

また現在は7割以上のユーザーが変動金利を選択していますが、住宅ローン比較 編集部は、10年を超える中期固定もしくは20年超の長期固定で借り入れるのが望ましいと考えています。
過去の住宅ローン金利の上昇局面で、返済に窮して物件を手放すことになったユーザーの多くは、変動金利で借り入れたユーザーでした。現時点では変動金利は全く上昇していませんが、歴史は繰り返すと言われるように、変動金利にリスクがあることは間違いありません。
住宅ローンを借り入れる(借り換える)のであれば、中期もしくは長期固定を是非選択肢の一つとして検討してみてください。

また先程のチャプターでもご紹介しましたが、住宅ローン金利は金融機関各社で設定が大きく異なります。例えば本来もっと金利が上がっているべきなのに、この金融機関だけ金利が変わらないというギャップが起こることもあるのです。
このギャップを利用すれば、より良い条件で住宅ローンを借り入れることができます。住宅ローン比較が実施している各種ランキングをチェックし、有利な条件で借り入れできる住宅ローンを選びましょう

住宅ローン金利上昇時の対策 その2
一部繰り上げ返済をフル活用する

住宅ローン金利の上昇に対して、最も有効な対策は、住宅ローンの一部繰り上げ返済を活用し、早期に住宅ローンを完済することです。

この時、重要になるのが一部繰り上げ返済の単位と手数料です。例えばフラット35の場合は、一部繰り上げ返済に関しては1回につき100万以上と定められているケースがほとんど。対してネット銀行の住信SBIネット銀行のネット専用住宅ローンauじぶん銀行 住宅ローンは、1円単位で一部繰り上げ返済が可能です。またメガバンクの場合、一部繰り上げ返済手数料を無料としている場合でも、保証料に関してはかかるケースがある点には注意しましょう。

住宅ローンを変動金利で借り入れ(借り換え)、万一の金利上昇の際の対策もしっかりしたいと考えている方は、一部繰り上げ返済の利用のし易さを重視し、住宅ローンを選ぶと良いでしょう

まとめ住宅ローンの金利上昇要因とその対策

住宅ローンの金利上昇要因とその対策

本特集は住宅ローンの金利上昇要因とその対策と題して、5つの金利上昇要因と、金利上昇時に効果を発揮する2つの対策をご紹介させていただきました。

住宅ローン金利の上昇傾向が今後しばらく続くことはまず間違いありません

住宅購入に伴う住宅ローンの新規借り入れを検討している方はもちろん、住宅ローンの借り換えを検討している方も、金利の上昇要因をしっかり把握した上で、有効な対策を立て、金利が今後さらに上昇したとしても、対処できるようにしておきましょう。

著者・総監修 早川 聡

著者・総監修 早川 聡

住宅ローン含め、金融の専門家(プロ)として様々な記事を執筆しており、最新の金利動向の記事執筆を担当。世界経済の動向を踏まえた金利分析と予測の精度に定評がある。住宅ローン金利の動向に関しては日本経済新聞からの取材を受けた経験あり。