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住宅ローン返済期間中に転勤が決まった場合の対処法

はじめに住宅ローン返済期間中に転勤が決まった場合の対処法

住宅ローンの返済期間は長期に渡るため、ローン返済期間中に何が起こるか誰にもわかりません。
契約者によっては、希望の物件がようやく見つかり、住宅ローンを組んで念願のマイホームを購入したものの、仕事の都合で転勤になり、マイホームで暮らすのが難しくなるといったケースも。実はこういったケースは決して珍しくありません(※大企業にはマイホームを購入すると、転勤するという都市伝説があるところも。筆者が以前勤めていた企業や取引先でも、この都市伝説に該当する転勤を何度も目の当たりにしました)。

では、住宅ローン返済期間中に転勤になり、マイホームに住むのが難しくなった場合、住宅ローンはどうなるのでしょうか?また転勤の間、マイホームをどうすべきなのでしょうか?

今回の住宅ローン比較の特集は、「住宅ローンと転勤」に注目。住宅ローン返済期間中に転勤になった場合の対処法をわかりやすく解説します。
すでに転勤が決まっており、住宅ローンやマイホームをどうすべきか悩んでいる方はもちろん、将来、転勤する可能性が高い方は、ぜひ最後までチェックしてみてください。

住宅ローン返済期間中に転勤になった場合の対処法住宅ローン返済期間中に転勤が決まった場合の対処法

住宅ローン返済期間中に転勤になった場合、大きく、「単身赴任する」、「家族全員で引っ越す」の2つの選択肢があります。さらに、「家族全員で引っ越す」場合は、マイホームを「売却する」または「賃貸に出す」という2つの方法から選ぶことに。つまり、住宅ローン返済中に転勤になった場合の対処法は大きく3つあり、その中から最適解を選ぶことになります

以下で、それぞれの選択肢について詳しく見ていきましょう。

住宅ローン返済期間中に転勤が決まった場合の対処法 その1
単身赴任する

住宅ローン返済期間中に転勤が決まった場合の対処法

住宅ローン契約者が単身赴任し、残りの家族はマイホームに住み続ける方法。この場合、住宅ローンの返済は、現在と変わりません
ただし、住宅ローン控除(住宅ローン減税)については注意が必要です。

住宅ローン控除とは、一定の条件を満たした住宅を購入する場合、その年の年末時点での住宅ローン残高の1%が10年間、所得税(※場合によっては住民税を含むケースもある)から控除される制度のこと。

一般的には、住宅ローン契約者本人がマイホームに住んでいることが住宅ローン控除を受ける条件になっています。ただし、転勤などやむを得ない事情で契約者本人が引っ越し、配偶者や子供がマイホームに住み続ける場合でも、住宅ローン控除を受けることが可能です

住宅ローン契約者が転勤によって海外に単身赴任する場合は注意しましょう。
平成28年税制改正前に、住宅ローンを借り入れた方は、海外赴任によって、住宅ローン控除が適用されないケースがあります。転勤によって海外に単身赴任する予定のある方は、住宅ローンを借り入れた時期を確認し、住宅ローン控除を受けることができるかどうか、事前に確認しておきましょう。

以下は平成28年の税制改正の内容です。

平成28年税制改正前
2016年3月31日までに住宅ローンを借り入れた場合
転勤によって、住宅ローン契約者が海外に単身赴任等をし、その年の12月31日に日本にいない場合、その年の住宅ローン控除は適用されない。
※ただし、出国前までに税務署に対して一定の手続きを行っている場合、帰国後に住宅ローン控除の期間が残っていれば、その期間内は、再度、住宅ローン控除を受けることができる。
平成28年税制改正後
2016年4月1日以降に住宅ローンを借り入れた場合
転勤によって、住宅ローン契約者が海外に単身赴任する場合でも住宅ローン控除が適用される。

住宅ローン返済期間中に転勤が決まった場合の対処法 その2
家族全員で引っ越し、マイホームを売却する

住宅ローン返済期間中に転勤が決まった場合の対処法

転勤する期間が決まっておらず、家の住み替えを検討している方や、物件価格が購入時より値上がりしている場合、マイホームを売却するのも選択肢の一つ。
ちなみに、住宅ローン返済中でも、マイホームを売却することは可能です。ただし、マイホームを売却する際は、現在残っている住宅ローン(住宅ローン残高)を一括で返済する必要があります

その理由は、マイホーム売却時、その家に設定されている抵当権を抹消しなければならないため。抵当権は住宅ローンを組む際、「借り入れ先の金融機関→抵当権者」、「住宅ローン契約者→抵当権設定者」という形で設定登記が行われており、住宅ローンの完済を条件に、抹消できるようになっています。このため、マイホーム売却時には、住宅ローンを完済する必要があるのです。

住宅ローンの完済には、「マイホームの売却額+自己資金」を充てるのが一般的。ただし、住宅ローン残高が多い場合、「マイホームの売却額+自己資金」では、住宅ローンが完済できないケースも少なくありません。

こうした場合、買い替えローン(住み替えローン)を利用すれば、残った住宅ローン分を新しく借り入れるローンに上乗せし、返済することが可能です。ただし、その分、借り入れ額が多くなり、返済の負担が大きくなるほか、住宅ローンの審査が厳しくなる点にも注意しましょう。

マイホームを売却する際は、以下の項目にいくらかかるのかを事前にシミュレーションし、できる限り負担を抑え、マイホームを売却できるよう、準備しておくことが大切です

マイホームを売却する際、いくらかかるか把握しておきたい項目

  1. 1 住宅ローン残高
  2. 2 マイホームの売却額
  3. 3 (住宅ローンの返済に充てられる)自己資金
  4. 4 諸費用(※引っ越し費用、仲介手数料など)
  • 「マイホームの売却額+自己資金」 > 「住宅ローン残高+諸費用」 になるのがベスト
  • 「マイホームの売却額+自己資金」 < 「住宅ローン残高+諸費用」 となる場合、不足分がどれくらいなのかを算出し、自己資金等で補えないかを検討する。自己資金で補うのが難しい場合は、買い替えローン(住み替えローン)の借り入れを検討。

また、マイホームの売却額(売却価格)は、どの不動産仲介業者を利用するかで大きく変わってきます。不動産仲介業者によって、査定価格はもちろん、得意とする物件も場所も異なるため、1社の不動産仲介業者だけに査定を依頼するのではなく、複数の不動産仲介業者に査定してもらい、査定結果を比較することが大切です
この際、査定価格が高いところが良い不動産会社という訳ではない点には注意しましょう。大切なのは物件の売却相場に対してどの程度の査定価格になっているのか?また担当者は信頼できるかという2点です。
「不動産一括査定サイト」を利用すれば、インターネットから、複数の不動産仲介業者に査定を依頼することが可能。簡易査定の結果がメール(または郵送)で届き、マイホームの売却額を簡単に比較できるため、マイホームを売却する際は、「不動産一括査定サイト」を上手く活用すると良いでしょう。

マイホームの売却におすすめの不動産一括査定サイト

HOME4u(ホームフォーユー)

HOME4u(ホームフォーユー)

査定対象 マンション、一戸建て、土地、マンション一棟、ビル一棟、アパート一棟、店舗・事務所・倉庫、その他
査定対象地域 全国
参加不動産会社数 約1,300社(2019年2月現在)
HOME4Uの特徴 HOME4U(ホームフォーユー)は、NTTグループの「NTTデータスマートソーシング」が運営する国内初・日本最大級の不動産一括査定サイト。東京建物不動産売買、野村の仲介+(プラス)、大成有楽不動産販売、住友林業ホームサービス、三井住友トラスト不動産など、1,300社以上が参加しており、売却査定数は累計35万件以上と、他の不動産一括査定サイトと比較しても、高い実績を誇っている。
HOME4Uの特徴は、所在地や物件情報を入力すると、無料の査定依頼ができる点。情報の入力にかかる時間は最短60秒と短く、簡単に査定価格・不動産会社を比較することができる。また、実際に査定してもらう不動産会社を最大6社まで自分で選ぶことができ、それ以外の企業から一切連絡が来ない点も嬉しい。
さらに、個人情報保護のための「プライバシーマーク」を取得しており、第三者に個人情報が公開されることが一切なく、安心してサービスを利用できる点も大きな魅力といえるだろう
HOME4Uは、マイホームを売却に出す際、ぜひチェックしておきたい不動産一括査定サイトの一つ。

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ソニー不動産

ソニー不動産

査定対象 マンション、一戸建て、土地、その他
査定対象地域 東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫(2019年2月現在)
参加不動産会社数 非公開
ソニー不動産の特徴 ソニーグループの「ソニー不動産」が運営する不動産一括査定サイト。東京、神奈川、千葉、埼玉、大阪、兵庫の物件を対象に無料の査定依頼ができ、利用者の90.8%がサービス利用に「とても満足」「満足」と回答する等、高い満足度を誇っている。
ソニー不動産の特徴は、売り手もしくは買い手のどちらかのみを担当する「片手仲介」を採用している点。仲介会社が売り手と買い手の両方を担当する「両手仲介」とは異なり、「片手仲介」を採用することで、利益相反を起こさず、高い売却額でマイホームを売却できる点は大きな魅力といえるだろう
また、所在地や物件情報を入力するだけで、簡単に無料の査定依頼をできる点もチェックしておきたい。さらに、無料査定に申し込みすると、不動産の高値売却を成功させる「不動産売却秘訣DVD」を無料でもらえる点も嬉しい。
査定対象地域が一部地域に限定される点には注意が必要だが、マイホームの高値売却を希望するのであれば、ソニー不動産は、上手く利用したい不動産一括査定サイトの一つといえるだろう。

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住宅ローン返済期間中に転勤が決まった場合の対処法 その3
家族全員で引っ越し、マイホームを賃貸に出す

「転勤の期間が決まっており、数年後に家族で戻ってくる予定がある」、「転勤期間中、マイホームを収益物件として誰かに貸し、収入を得たい」という場合は、マイホームを賃貸に出すのがおすすめです。

賃貸には、期限を決めてマイホームを賃貸に出す「定期借家契約(定借)」と、期間を決めずにマイホームを賃貸に出す「普通借家契約(賃貸借契約)」の2種類がありますが、転勤から戻ってくる期間がある程度決まっている場合は、「定期借家契約」を選ぶのがおすすめ
(※ちなみに、「普通借家契約」で賃貸に出してしまった場合、現在の法律では入居者に簡単に退去してもらうことはできず、原則、入居者の意向が優先されるため注意が必要です。)

ただし、定期借家契約で貸し出す場合も、下記の注意点があるため、マイホームを賃貸に出す場合は、事前にしっかり確認しておきましょう。

マイホームを定期借家契約で賃貸に出す場合の注意点

賃貸料が相場より1割程度安くなる あらかじめ賃貸できる期間が決まっているため、賃貸期間の決まっていない普通借家契約と比較すると入居希望者が集まりにくく、賃貸料を相場より1割程度安く設定するケースがほとんどです。礼金を減らすケースも。
固定資産税や修繕費などの諸費用が引き続き発生する マイホームを賃貸に出しても、家や土地などの資産を所有している人にかけられる「固定資産税」や、マイホームの修理・メンテナンスにかかる修繕費は発生します。また、賃貸物件がマンションの場合、管理費や修繕積立金が家主負担となる点にも注意しましょう。
家賃を設定する際は、諸費用分も考慮した上で、適切な賃貸収入が得られる料金に設定することが大切です
現在契約している住宅ローンから別のローンに組み直す可能性も 住宅ローンは本来、契約者本人やその家族が住む家を購入することを条件に、金利が優遇され、低金利で組むことができるローン。
転勤を機に、家族みんなで引っ越し、家賃収入を得るのは、住宅ローンの借入条件から外れるため、金融機関によって、アパートローンや投資用・事業用のローンへの借り換えを提案されることがある点には注意しましょう。
その一方で、金融機関によっては、転勤や結婚、介護等のやむを得ない事情がある場合、例外としてマイホームを賃貸に出す場合でも、住宅ローンを継続して利用できるケースもあります。(※また、フラット35も転勤期間中の賃貸を認めています)
あわせて読みたい フラット35 ランキング 転勤になった場合の住宅ローンの対応(※住宅ローンをそのまま利用できる/別のローンに組み直す等)は、借り入れ先の金融機関によって異なるため、転勤が決まったら、必ずその旨を住宅ローン契約中の金融機関に相談しましょう。
※ちなみに、金融機関への相談なしに転勤し、マイホームを賃貸に出した場合、住宅ローンを組む上での約款規定違反となり、ペナルティを課せられるケースがある点には注意が必要です。
住宅ローン控除(住宅ローン減税)の対象外になる 転勤により、マイホームを賃貸に出した場合、住宅ローン契約者やその家族がマイホームに住んでいないことになるため、住宅ローン控除を受けることはできません。

また、不動産無料査定サイトの中には、マイホームを賃貸に出した場合の賃料の提案が受けられるところもあるので、転勤を機に、マイホームを賃貸に出す際は、ぜひチェックしておきましょう。

マイホームを賃貸に出す際におすすめの不動産無料査定サイト

すまいValue

すまいValue

査定対象 マンション、一戸建て、土地、マンション一棟、ビル一棟、アパート一棟、その他
査定対象地域 全国
参加不動産会社数 6社
すまいValueの特徴 すまいValueは、小田急不動産、東急リバブル、三井のリハウス、住友不動産販売、三菱地所ハウスネット、野村の仲介+(プラス)の大手不動産会社6社が参加する不動産無料査定サイト。利用者を対象に行ったアンケートでは、96.7%が「トラブルなく安心・安全に取引できた」と回答しており、利用者からの高い評価を獲得している。
すまいValueでは、全国の物件を対象に、所在地や物件情報を入力すると、簡単に無料の査定依頼を行うことが可能。ちなみに、一度の入力で最大6社の不動産会社へ査定依頼をすることができる。
また、すまいValueに参加している大手不動産会社は物件の販売だけではなく、分譲マンションの賃貸としての貸出にも強く、マイホームの売却査定を依頼する際、備考欄に「賃貸として貸し出した場合の賃料についても査定を付けてほしい」と記載すれば、賃貸の提案を受けられる点もチェックしておきたい
すまいValueは、マイホームを売却する場合はもちろん、賃貸に出す場合にも上手に利用したい不動産無料査定サイトといえるだろう。

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コラム マイホームを空き家として維持する(保守する)方法

「将来、その家に戻る予定があるが、それまでマイホームを賃貸に出すのは避けたい」といった場合、マイホームを空き家として維持する(保守する)のも一つの方法です。

ただし、マイホームを空き家にすると、家が荒れやすくなることに加え、防犯面で近隣の人に迷惑をかける可能性があるため、定期的にマイホームに戻る、または業者に依頼するなどして、家を維持・管理する必要があります。マイホームを空き家として維持する場合、管理費・維持費が発生する点には注意しましょう。(※加えて、空き家の状態でも、固定資産税は発生します。)
また、人が住んでいない家に火災保険を付けることは難しいため、火災保険の更新が難しくなる点や、火災保険に加入できた場合でも、保険料が高額になる点にも注意が必要です。

マイホームを空き家として維持する際は、維持費としてどれくらいの費用がかかるのか事前に把握しておきましょう。もし、転勤期間中、空き家として維持するのが難しい場合は、マイホームの売却や賃貸を検討するのがおすすめです。

住宅ローン返済期間中に転勤が決まった場合の対処法~まとめ~住宅ローン返済期間中に転勤が決まった場合の対処法

住宅ローン返済期間中に転勤が決まった場合の対処法

住宅ローン返済期間中に転勤が決まった場合の対処法について解説した今回の特集はいかがでしたでしょうか?
住宅ローンの返済は長期に渡るため、返済期間中に仕事の都合で転勤になり、マイホームに住むのが難しくなるケースは少なくありません。なかには、急な転勤を命じられ、マイホームや住宅ローンをどうしたらよいのかわからないという方もいらっしゃるはず。

住宅ローン返済期間中に転勤になった場合の対処法は1つではありません。それぞれの方法をチェックし、住宅ローンをどうするのかもしっかり検討し、自分にとってベストな方法を選択することが大切です

近いうちに転勤を予定している方や、将来、転勤する可能性のある方は、本特集を参考に、住宅ローン返済期間中に転勤が決まった場合の対処法をチェックし、転勤時、マイホームや住宅ローンをどうするかを決める際の参考にしましょう。

著者 溝口 麻衣

著者 溝口 麻衣

Hayakawa所属のチーフライター兼編集者。住宅ローン返済期間中に転勤が決まった場合の対処法についての調査と記事執筆を担当。
わかりやすく、ちょっとした気付きのある記事を目指し、日々原稿を執筆している。2級FP技能士取得。