お悩み・相談働けなくなった時、住宅ローンをどうする?保険を使った対処法

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働けなくなった時、住宅ローンをどうする?保険を使った対処法

住宅ローンを組む際、働けなくなった時のことも考えておくべき理由働けなくなった時、住宅ローンをどうする?保険を使った対処法

現在住宅ローンを組まれている方、これから住宅ローンの利用を検討されている方で、自分が将来働けなくなった時のことを考えたことがある方は、どれ位いらっしゃるでしょう?

そんなこと考えてもしょうがないと思われるかもしれませんが、実はこれは身近にある問題であり、考えておくべき大切な項目の一つです。

以下は公益財団法人「生命保険文化センター」が公表した「平成28年度生活保障に関する調査」から過去5年間の入院経験の有無を抜粋したものです。

表1:過去5年間の入院経験の有無(出典:平成28年度生活保障に関する調査
N 入院経験あり 入院経験なし わからない
全体 4,056 14.8 85.0 0.1
性別
男性 1,746 15.3 84.4 0.3
女性 2,310 14.5 85.5 0.0
年齢別
18~19歳 89 11.2 88.8 0.0
20歳代 395 7.3 92.7 0.0
30歳代 696 10.1 89.8 0.1
40歳代 912 11.8 88.0 0.1
50歳代 799 16.3 83.6 0.1
60歳代 1,165 21.9 77.9 0.2

この表を見ると、住宅ローン利用者が最も多い30歳代、40歳代でも約10%、50歳代になると15%以上、60歳代になると20%以上の方が入院する可能性があることがわかります。

また同調査では、入院日数についても調査を実施しています。以下にその結果をまとめました。

表2:直近の入院時の入院日数
N 5日未満 5~7日 8~14日 15~30日 31~60日 61日以上 平均(日)
全体 594 17.5 25.4 25.1 19.5 6.6 5.9 19.1
性別
男性 262 19.1 26.0 20.6 21.8 6.9 5.7 19.7
女性 332 16.3 25.0 28.6 17.8 6.3 6.0 18.6
年齢別
18~19歳 10 40.0 20.0 20.0 10.0 10.0 0.0 11.5
20歳代 29 17.2 31.0 31.0 20.7 0.0 0.0 11.6
30歳代 70 22.9 25.7 30.0 12.9 2.9 5.7 15.5
40歳代 105 21.9 27.6 27.6 16.2 3.8 2.9 15.0
50歳代 129 17.1 28.7 23.3 16.3 7.8 7.0 19.7
60歳代 251 13.5 22.3 23.1 24.7 8.8 7.6 22.6

ここで注目すべきは30歳代の8.6%、40歳代の6.7%、50歳代、60歳代に至っては約15%もの方が、1ヶ月以上入院するリスクがあるという点です。

住宅ローンを利用する際、このリスクに備えることができていれば、より安心できるはず。今回の住宅ローン比較の特集は、働けなくなった時、住宅ローンをどうする?と題して、保険を使った対処法をご紹介します。

住宅ローンの団信だけでは働けなくなった時の保障は不十分働けなくなった時、住宅ローンをどうする?保険を使った対処法

働けなくなった時、住宅ローンをどうする?

住宅ローンには、契約者に万が一のことがあった場合に備えるため、団体信用生命保険が付帯しています。

この保険(団信)は、契約者が死亡した場合もしくは高度障害状態になった場合に、住宅ローン残高がゼロになるというもの。裏を返せば、死亡もしくは高度障害状態ではない就業不能リスクには対応できません。

また一般団信を強化する形で特約を付帯させることもできますが、この特約にも注意が必要です。例えば住信SBIネット銀行の住宅ローンに付帯させることができる全疾病保障は、1年間就業不能状態が継続した場合、住宅ローン残高がゼロになるという仕組み。つまり保障の適用を受けるためには、1年間住宅ローンを返済しなければいけないのです。

この他にもがん疾病保障、三大疾病保障、八大疾病保障など、様々な特約がありますが、いずれも特定の病気を対象としており、該当する病気以外で就業不能状態になった場合のリスクをカバーすることはできません。

実はさらにもう1点、注意しなければいけない点があります。それは就業不能になるのは病気やケガだけではなく、うつなどの精神疾患が理由になるケースが多いということです。

以下に全国健康保険協会が公表している「現金給付受給者状況調査(平成30年度)第一部傷病手当金受給者」の内訳をグラフ化しました。

現金給付受給者状況調査

このデータを見ると、傷病手当金受給者の受給理由でもっとも多いのが精神疾患であることが一目瞭然でわかります。

万一働けなくなった時、住宅ローンをどうするか本気で考えるのであれば、精神疾患のリスクについても考慮し、対処法を考えておく必要があると言えるでしょう。

働けなくなった時の家計の負担を考えよう働けなくなった時、住宅ローンをどうする?保険を使った対処法

働けなくなった時、住宅ローンをどうする?

通常、住宅ローンを契約する際は、収入と支出のバランスを意識し、無理なく返済できる計画をたてます。健康でしっかり働ける状態であれば、返済計画は機能しますが、何らかのきっかけで働けない状態になると、収入の大部分を占める給与が減るだけではなく、支出に治療費が加わることに。さらに治療費とは別で、住宅ローンを毎月返済していく必要があるため、収入と支出のバランスに大きな問題が生じます。

それでも短期間であれば、貯金を切り崩したり、加入している保険を活用することで乗り切れるかもしれません。しかし、この期間が長期化すると、家計への負担が増大し、返済計画に支障が出る可能性があります。

以下の住宅金融支援機構が発表している、フラット35利用者の全国平均のデータです。

住宅ローン利用者(フラット35)平均データ
加入者の年齢 40.1才
家族数 3.1人
世帯年収 598万円
住宅面積 100.8㎡
住宅ローン残高 3574.8万円
手持金(貯金) 426.8万円
1カ月当たりの住宅ローン返済額 10.03万円

ちなみに1ヶ月あたりの住宅ローン返済額は最も高いのが東京で12.52万円、最も低いのが島根で8.09万円となっています。

ではこのモデルケースの加入者が働けなくなった時のことを考えてみましょう。

会社員の場合、有給期間は全額、病気やケガ、精神疾患で4日以上働けない期間があった場合、傷病手当金を最長1年6か月の間、受け取ることができます。

傷病手当金の計算式は以下の通りです。

支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3

また医療費が高額になる場合、高額療養制度を利用することで、負担額を大幅に抑えることができます。例えば1ヶ月の医療費が100万円だった場合、以下の金額が負担額になります。

年収約370万円~約770万円の方の医療費(※医療費が100万円だった場合)

8万100円+(1,000,000円-267,000円)×0.01=8万7,430円

  • 過去12ヶ月以内に3回以上、上限額に達した場合は、4回目から多数回該当となり、医療費の上限が下がる。上記ケースの場合は44,000円

このように会社員であれば、ある程度保障が受けられるため、一定期間は貯金を切り崩しながら生活することはできるはず。

ただ病気の治療費、毎月の住宅ローン返済に加え、いつ復帰できるのかわからない不安と戦うためには、できる限り貯金を切り崩さないほうが良いでしょう。

住宅ローンを問題なく返済でき、医療費が高額になってもカバーできる、月10万円程度を保険で受け取ることができれば、安心できるはずです。

割安な保険を活用し、働けなくなった場合のリスクに備えよう働けなくなった時、住宅ローンをどうする?保険を使った対処法

働けなくなった時、住宅ローンをどうする?

それでは最後に保険を活用し、働けなくなった場合のリスクに備える方法を考えていきます。

団信は死亡保障と高度障害時の補償として活用し、働けなくなった場合のリスクは、団信ではカバーできない病気、ケガ、精神疾患含む就業不能状態に対応できる保険を活用することで備えておけば良いでしょう。

また生命保険会社や共済が提供する保険をひっかり比較し、割安な保険を選ぶことで、保険料を節約できれば、家計の負担を最小限に抑えることができます。

保険を活用する場合は、医療費の備えと収入が減ることへの備えがあれば万全です。

収入が減ることに保険で備える

病気やケガなどで働けなくなった場合に、一定の収入を保障してくれる保険として、最近人気が急上昇しているのが就業不能保険です。万一就業不能状態に陥った際に、収入を落としたくないという方にとって、最も合理的な保険と言えるでしょう。

就業不能保険と一言でいっても、保障が受けられる病気やケガに違いがある点には注意が必要です。

医療費に保険で備える

就業不能保険は病気の状況に関わらず、一定期間経過後、確実に一定収入を得ることができる一方で、入院1日目から保障を受けることはできません。病気やケガ、精神疾患での入院に1日目から備えるのであれば、やはり医療保険への加入がおすすめです。

医療保険に加入する際は、どういう保障が必要なのかをしっかり考え、付帯させる保障を選びましょう。

評判の良い医療保険をしっかり調べ、万一の場合に備えるのは選択肢の1つです。

まとめ働けなくなった時、住宅ローンをどうする?保険を使った対処法

今回の住宅ローン比較の特集は、働けなくなった時、住宅ローンをどうする?ということに焦点をあて、保険を使った対処法をご紹介しました。

実際に万一働けなくなった時は、会社員には様々なセーフティネットが用意(※自営業者で国民年金に加入している場合、上記で説明した傷病手当金は支給されません)されています。ただそれだけで全ての費用を賄うのは困難です。

これから住宅ローンの利用を検討している方はもちろん、現在住宅ローンを利用している方で、将来の就業不能リスクに備えておきたいという方は、本特集を参考に、保険を上手く活用し、不安を解消しましょう

著者・総監修 早川 聡

著者・総監修 早川 聡

住宅ローン含め、金融の専門家(プロ)として様々な記事を執筆しており、最新の金利動向の記事執筆を担当。世界経済の動向を踏まえた金利分析と予測の精度に定評がある。住宅ローン金利の動向に関しては日本経済新聞からの取材を受けた経験あり。