住宅ローンの基礎知識住宅ローン審査で虚偽の申告をした場合のリスクとは?
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フラット35の不正利用が発覚。脱税の罪に問われる可能性も住宅ローンの基礎知識
住宅金融支援機構が、長期固定型住宅ローンの代表格「フラット35」を不正利用している事例があることを公表しました。
フラット35は政府系金融機関と民間事業者が提携、多くの国民がマイホームを購入できるよう、長期固定型の住宅ローンを低金利で借り入れることができる商品です。フラット35の資金用途は自己居住用に限られており、投資目的での利用は認められていません。
ただしフラット35は転勤などの理由で物件に住めなくなった場合、自己所有で購入した物件の貸出しを認めていました。
今回の不正利用はその穴をつき、最初から投資目的で購入したにも関わらず、自己所有と虚偽の申告を行い、すぐに第三者に貸し出すことで、収益を得ていたことが疑われています。
例えばフラット35を35年固定1.3%で借り入れ、5%の利回りで貸し出せば3.7%の利回りに。また自己所有であれば、住宅ローン減税(控除)の対象になります。もしこの制度を利用していた場合、脱税行為です。
不正利用者には、より重い罪が課せられる可能性が高いでしょう。
住宅ローン審査で虚偽の申告をするとどうなる?
フラット35の不正利用は、自己所有と偽って投資目的に住宅を購入するというものだったので、少し特殊なケースかもしれません。
ただ実は誰もが住宅ローンの不正利用に該当してしまう可能性があります。それは住宅ローン審査での虚偽申告です。
住宅ローンを利用する際は、必ず住宅ローン審査が行われます。その審査の際、チェックされるのは以下の8項目です。
住宅ローン審査でチェックされる8項目
- 1年齢
- 2勤務先
- 3職業
- 4職種
- 5勤続年数
- 6年収
- 7現在の借り入れ状況
- 8過去の借り入れの返済履歴
年齢や勤務先で嘘をつくことはできませんが、勤続年数や年収、借り入れ状況はわからないだろうと考え、勤続年数を偽ったり、少し金額を多めに書くケースや借り入れ状況を正確に書かないケースは、実は少なくありません。
ただ実際には金融機関がしっかり調査すれば、年金の加入履歴や源泉徴収票、信用情報機関の調査などで、これらの嘘を見抜くことが可能です。
つまりほとんどの場合、虚偽の記載をしても意味がありません。
もし審査をすり抜けて、住宅ローン審査を通過したり、書類の偽造やアリバイ会社の利用などで経歴や職業、年収を偽り、住宅ローン審査をクリアしたとしても、どこかのタイミングで不正が発覚する可能性のほうが高いでしょう。
そして虚偽が発覚すると、その住宅ローンの契約は無効となり、即座に借り入れ金額の返済を求められます。もし返済ができない場合は物件を売却することに。また物件の売却価格が住宅ローン残高を下回る場合は、その金額分の負債を背負うことになるのです(過去の判例を見ると、住宅ローンを虚偽申告で借り入れ、発覚時の一括返済ができず、自己破産するケースも見受けられました)。
たとえ住宅ローン審査を突破できたとしても、これだけ大きなリスクがあるのでは、到底割に合いません。
まとめ住宅ローン審査は正々堂々突破しよう!
今回の住宅ローン比較のニュースは、住宅ローン審査で虚偽の申告をした場合のリスクについて解説しました。
住宅ローン審査に限らず、リスクに見合ったリターンが得られない場合、そのリスクを背負う価値はありません。また住宅ローンを借り入れている35年間、不正が発覚しないかとずっとびくびくしながら過ごすのは、精神的にも決して良いことでないはずです。
たとえ今住宅ローン審査に通過できなかったとしても、一つ一つ問題をクリアしていけば、必ず住宅ローンを借り入れることができるようになります。
もし不動産会社から、審査を通過するためのアイディアを持ちかけられたとしても、その誘いに乗ってはいけません。住宅ローン審査は、正々堂々自分の力で突破しましょう!
著者・総監修 早川 聡
住宅ローン含め、金融の専門家(プロ)として様々な記事を執筆しており、最新の金利動向の記事執筆を担当。世界経済の動向を踏まえた金利分析と予測の精度に定評がある。住宅ローン金利の動向に関しては日本経済新聞からの取材を受けた経験あり。