金利タイプ別住宅ローン変動金利のメリットとデメリット。おすすめの借り方は?

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住宅ローン変動金利のメリットとデメリット。おすすめの借り方は?

住宅ローン利用者の約6割が「変動金利」を選んでいる住宅ローン変動金利のメリットとデメリット。おすすめの借り方は?

住宅金融支援機構が定期的に実施している『民間住宅ローンの実態調査』によると、2018年現在、住宅ローン利用者が選ぶ金利タイプは、「変動金利」を選ぶ人が約57%と大半を占めています

変動金利の人気が高い背景には、歴史的な低金利が続いている現状に加え、変動金利の指標となる日本の政策金利が、今後しばらくは「大幅に上昇する可能性が低い」と考えられているため。
金利の将来の動きを完全に予測することは不可能ですが、全体としては、金利が低く、その状況がしばらく続きそうという今の状況が、変動金利型の住宅ローンが人気を集める理由と言えるでしょう。

しかし、他の金利タイプと同じように、変動金利にもメリットとデメリットがあります。

住宅ローンを変動金利で検討している方や、変動金利と固定金利のどちらにすべきか迷っている方にとって、変動金利のデメリットにはどういうものがあるのか、いざというときのリスク回避が可能かどうかは気になるポイントではないでしょうか。

そこで今回は、「変動金利のメリットとデメリット」をテーマに、変動金利の基礎知識と、金利上昇が起こった場合のリスクの回避方法、変動金利をおすすめできるケースとできないケースについて解説します。

住宅ローンの変動金利を利用するメリットとは?住宅ローン変動金利のメリットとデメリット。おすすめの借り方は?

住宅ローン変動金利のメリットとデメリット。おすすめの借り方は?

住宅ローンの変動金利を利用する最大のメリットは「金利の低さ」です。
たとえば、auじぶん銀行の2018年12月の住宅ローン金利を見てみると、固定金利(固定期間35年間)が2.230%であるのに対し、変動金利は0.457%と、じつに4倍以上の開きがあります
長期固定金利の中では最も有利な金利条件で借り入れできるフラット35でも、1.410~2.070%(返済期間35年間)となっており、変動金利と比較すると約1%もの差が

住宅ローンの金利は、低ければ低いほど、同じ返済期間(例:35年間)であっても、月々の返済額を抑えることができます。借入額に占める利息の割合も低くなるため、元金部分の返済スピードが早く、結果として総返済額を大幅に圧縮することが可能です。また総返済額を抑えることができる分、繰り上げ返済することで、より完済が早まる点もメリットと言えるでしょう。
また、変動金利型の住宅ローンは、ほとんどの金融機関が取り扱っている看板商品の1つでもあります。
各金融期間が金利の低さを競っており、特に、低金利を強みとしているネットバンクでは、好条件で変動金利型の住宅ローンを借り入れる(借り換える)ことができるでしょう。

  • 変動金利のメリット
  • 期間の長い固定金利と比較すると金利が低い(月々の返済額が少なくすむ)
  • 住宅ローンの元金部分の返済が早い(繰り上げ返済するメリットが大きい)
  • 取り扱う金融機関が多い(ネットバンクの金利は特に低い傾向あり)

住信SBIネット銀行 住宅ローン(WEB申込コース)

住信SBIネット銀行

特徴 SBIホールディングスのネットバンク。変動金利の低さに定評がある。auじぶん銀行と同様、住宅ローンのペーパーレス契約が可能。
住宅ローン保証料、一部繰り上げ返済、団体信用生命保険料、変動金利を利用中の全額繰り上げ返済手数料が無料。また、すべての疾病を原因として所定の就業不能状態(働けない状態)となった場合に、住宅ローンの残高がゼロになる「全疾病保障」も無料で付帯できる。
金利
  • 変動0.325
    ※新規借り入れの場合
  • 変動0.32
    ※借り換えの場合
  • 【新規借入れの場合】物件価格の80%以下で住宅ローンを借入れると、表示金利から年-0.027%優遇
  • 審査結果によっては、表示金利に年0.1%~0.3%上乗せとなる場合があります。
  • 借入期間を35年超でお借り入れいただく場合は、ご利用いただく住宅ローン金利に年0.15%が上乗せとなります。

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ソニー銀行

ソニー銀行

特徴 ソニーグループのネットバンク。住宅ローンの金利を他行よりも半月ほど早く公表。変動金利は、他の金融機関のような短期プライムレートの直接連動ではなく、住宅ローンの運営に必要な資金調達コストなどをもとに決定している。
住宅ローン保証料、一部繰り上げ返済手数料、団体信用生命保険料は無料。また、auじぶん銀行と同様の「がん50%団信」も無料で付帯する。変動金利と固定金利の切り替えが容易。
金利
  • 変動0.397
(変動セレクト住宅ローン/新規購入の場合)
  • 変動0.397
(変動セレクト住宅ローン/借り換えの場合)

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auじぶん銀行

auじぶん銀行

特徴 三菱東京UFJ銀行とKDDIが共同出資するネットバンク。住宅ローン契約のペーパーレス化に力を入れており、申し込みから契約までネットで簡潔するしくみを実現している。
住宅ローン保証料・一部繰り上げ返済手数料は無料。団体信用生命保険も一般団信に加え、がん50%保障団信へも上乗せ金利なしで無料で加入できる。さらに、がんと診断された場合に住宅ローンの残高が半分になる「がん50%団信」も金利上乗せなしで付帯できる。変動金利適用中は全額繰上返済の手数料も無料。
金利
  • 変動0.319
    ※新規借入れ
  • 審査の結果によっては保証付金利プランとなる場合があり、この場合には上記の金利とは異なる金利となります。 金利プランが保証付金利プランとなる場合は、固定金利特約が3年、5年、10年に限定されます。

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住宅ローンの変動金利を利用するデメリットとは?住宅ローン変動金利のメリットとデメリット。おすすめの借り方は?

一方で、住宅ローンの変動金利を利用するデメリットは、名称の通り「金利が変動する点」です。
多くの金融機関が、半年に一回(おもに4月と10月に)変動金利型の住宅ローン金利を見直します。

変動金利は、「短期プライムレート」と呼ばれる指標に連動しており、これが上下することによって、変動金利型住宅ローンの金利も変化します。

ただし、短期プライムレートは、2009年1月時点から現在まで1.475%(最頻値の場合)で変化していません。そのため変動金利も、前述の通りほぼ変わっておらず、非常に低い水準で推移しているのです

まめ知識 短期プライムレートとは?

金融機関が優良企業に向けに、短期で(1年以内)資金を融資する場合の「最優遇貸出金利」のこと。
日銀の政策金利(無担保コール翌日物)の影響により上下する。日本の政策金利は2009年1月時点から0.10%で推移しており、これが短期プライムレートにも反映されている。

知っておきたい5年ルールと125%ルール

住宅ローン変動金利のメリットとデメリット。おすすめの借り方は?

低水準で安定している変動金利ですが、将来、日本の政策金利が上昇した場合は、短期プライムレートも連動して上がり、必然的に変動金利も高くなる可能性があります。

ただし、変動金利型の住宅ローンには、金利上昇による急激な返済額の増加を避けるために、「5年ルール」「125%ルール」と呼ばれる制度が設けられています

5年ルールとは、金利が上昇した場合にも、返済スタートから当初5年間は、毎月の返済額を一定に保つ制度のこと。
また、125%ルールでは、返済額が上昇した場合でも、増額の幅をそれまでの1.25倍に抑えることを義務付けています。(たとえば、月々の返済額が8万円だった場合は、最高でも10万円まで。)

どちらのルールも、月々の返済額の急激な上昇を抑えるための激変緩和措置です。
住宅ローンを組む際は、ほとんどの人が、1か月の返済可能額を考慮して借入額を決めるため、この返済計画が大幅に狂うことがないよう、上記措置がとられています。

金利が上昇するということは、元金に対して課せられる利息が変化することを意味します。
つまり、激変緩和措置が取られているあいだは、実際の返済額に大きな変化がなくても、返済額の「元金」と「利息」の割合は変化し、当初よりも元金部分の返済が遅れる(=完済までの時間が延びる)ことになるのです。

このように、変動金利は金利の上昇や下降の見通しがあらかじめ決まっておらず、最終的な総返済額を予測することができません。こうした不確実性が、住宅ローンの変動金利を利用する最大のデメリットと言えるでしょう。

  • 変動金利のデメリット
  • 金利が半年ごとに見直される
  • 総返済額を正確に予測できない(将来の金利の推移を予測できない)

変動金利のリスク回避方法と、変動金利をおすすめできるケース、できないケース住宅ローン変動金利のメリットとデメリット。おすすめの借り方は?

住宅ローン変動金利のメリットとデメリット。おすすめの借り方は?

変動金利のメリットとデメリットを考えた場合、低金利は魅力だけれど、金利変動のリスクは避けたい、というのが多くの方の本音ではないでしょうか。

変動金利のリスクは、借入時と返済中の工夫によって、ある程度、回避することができます。
リスク回避方法の1つめは、住宅ローンを限度額いっぱいに借りず、月の返済額に余裕をもたせること
2つめは、返済期間をできる限り短めに設定することです
借入額を少なく、また、返済期間を短くするほど、将来、金利が変動した場合の返済額の上昇幅を抑えることができます。

たとえば、毎月の返済とは別に「返済用の貯蓄」を確保し、定期的に、もしくは金利上昇の気配があった時点で、いつでも繰り上げ返済をできるようにしておくと良いでしょう。
繰り上げ返済がもつ返済期間の短縮効果や元金の削減効果によって、総返済額の上昇を抑えることができます。

また、万一、返済額が上昇した場合に備えて、月々の返済額に余裕をもたせておくことも大切です。
もしも、住宅購入資金に余裕がなく、収入に占める住宅ローンの割合(返済負担率)を高めに設定せざるをえない場合は、変動金利よりも、金利変動リスクのない長期固定金利の利用をおすすめします。

変動金利の利用をおすすめできるケース

  • 毎月の返済額に余裕がある(返済額が増えても対応できる)
  • 返済期間が短い
  • 繰り上げ返済を積極的にしていく予定がある

変動金利の利用がおすすめできないケース

  • 返済額が上がると家計が厳しくなる
  • 返済期間が長い
  • 繰り上げ返済はしない予定

変動金利のメリットとデメリットは表裏一体。リスク回避の方法を知ってベストな金利タイプを選ぼう!住宅ローン変動金利のメリットとデメリット。おすすめの借り方は?

住宅ローン変動金利のメリットとデメリット。おすすめの借り方は?

住宅ローンの変動金利には、「低金利」というメリットと、「将来の金利変動リスク」というデメリットがあります。
一定のリスク(不確実性)があるからこそ、低い金利というリターンを受けることができる、と考えても良いでしょう。

変動金利に備わっているメリットとデメリットは、どちらも切り離せないものですが、リスクの内容を理解して、いざというときに少しでも住宅ローンの残高や返済期間を少なくする準備をしておけば、デメリットは最小限に抑えることができます。

これから新規に住宅ローンを組む方や、借り換えを検討している方は、本特集も参考に、変動金利のメリットだけではなく、デメリットを理解したうえで、ご自身に合った金利タイプの住宅ローンを選びましょう!

著者 長尾 尚子

フリーランスライター。得意分野は、育児・教育、住宅ローン、保険、金融、エンタメ等、幅広い。子ども3人を育児中のママでもある。
【資格】消費生活アドバイザー、FP2級