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住宅ローンを頭金なしで組むメリットとデメリット
- 住宅ローンの基礎知識
はじめに
住宅ローンを組む際、「頭金を用意したほうが良い」というのは定説です。
ただ、数ある住宅ローンのなかには、頭金なしでの借り入れに対応しているものもあり、こうした住宅ローンを利用すれば、現金の支出をできる限り減らした状態で住宅を購入できます。
特に、子どもの進学や車の買い替えなど、住宅購入のタイミングでほかにも大きな出費の予定があり、手元に現金を残しておきたい場合や、気に入った物件をすぐに購入したい場合、頭金なしで住宅ローンを組むのも一つの方法といえるでしょう。
その一方で、頭金なしで住宅ローンを組む場合、頭金ありの場合と比較して、リスクや注意したい点があるのも事実。頭金なしで住宅ローンを組む際は、こうしたリスクや注意点もしっかりと把握しておくことが大切です。
そこで今回は「住宅ローンの頭金」に注目し、住宅ローンを頭金なしで組む際に知っておきたいメリットとデメリット、注意点等をわかりやすく解説。さらに、頭金なしで組めるおすすめの住宅ローンについても紹介しています。
頭金なしで住宅ローンの借り入れを検討している方は、ぜひチェックしてみてください。
住宅ローンの基礎知識 組む前に初心者が知っておきたいポイントを解説
借入期間や金利タイプ、返済方法など、初心者が住宅ローンを組む前に知っておきたいポイントをわかりやすく解説しています。
住宅ローンを頭金なしで組むメリットとデメリット
住宅ローンの頭金とは
はじめに、住宅ローンを組む前に知っておくべき5つのポイントを見ていきましょう。
住宅ローンの頭金とは?
住宅を購入する際には、様々な費用がかかります。具体的には印紙代や保証料、登記費用、融資を受ける際にかかる事務手数料といった諸費用です。
住宅を購入する際は、まずこれらの諸費用を最低限用意する必要があります。
実は、住宅ローンの頭金を考えるのは、その次のステップ。一般的には諸費用を考慮した上で、余裕資金(貯蓄)の中から捻出するのが住宅ローンの頭金となります。
住宅ローンの頭金の目安は?
住宅ローンの頭金の目安は、借入額の2割(20%)程度。つまり、たとえば3,000万円を借入れる場合、頭金として600万円ほどが必要です。
ただ最近では、借入額の1割を頭金として用意できれば、多くの金融機関で優遇金利の適用を受けられるようになっています。そのため、頭金を準備するのであれば、最低でも借入額の1割を用意しておくと良いでしょう。
住宅ローンの自己資金とは?
住宅ローンの自己資金とは、住宅ローンを組む(住宅を購入する)際に、自分の貯蓄から準備する住宅購入資金のこと。
ただ、全貯蓄を住宅ローンを組む際の自己資金に充ててしまうと、いざという時の出費に対応できません。そのため、日々の生活費を含め、ある程度の貯蓄は残した上で、住宅ローンの自己資金を準備することが大切です。
なお、「住宅ローンの自己資金」というと、住宅ローンを組む際の初期費用に充てられるため、「住宅ローンの自己資金=頭金」と考える方もいると思いますが、必ずしもそうではありません。
住宅ローンの初期費用には、頭金に加え、取り扱い事務手数料や保証料といった「諸費用」も含まれます。つまり住宅ローンの自己資金は、頭金だけではなく、諸費用についてもしっかり考慮しておくことが大切です。
住宅ローンの自己資金 = 頭金 + 諸費用
ちなみに、住宅ローンを組む際に必要な頭金・諸費用の目安は以下の通り。
住宅ローンの頭金・諸費用の目安まとめ
- 頭金
- 物件を購入する際(住宅ローンを組む際)に当初支払う現金のこと。近年では、頭金なしで組める住宅ローンもある。
- 頭金の目安物件価格の10~20%
- 諸費用
- 物件を購入する際(住宅ローンを組む際)に発生する事務手数料や保証料、印紙代などの費用のこと。
- 諸費用の目安物件価格の5~10%
- ただし、諸費用に関しては、金融機関によって金額が大きく異なるため注意が必要。複数の金融機関で諸費用を比較し、安く利用できるところを選ぶのがおすすめ。
頭金と諸費用の目安を考慮すると、住宅ローンを組む際の自己資金の目安は、物件価格の20%~30%程度というのが定説です。
ただし、これはあくまでも目安であり、絶対的な数値ではありません。住宅ローンを組む際は、事前にきちんと返済計画を立て、無理なく返済するために必要な分の自己資金を用意することが大切です。
住宅ローンを頭金なしで組むメリットとデメリット
次に、住宅ローンを頭金なしで組む場合に知っておきたいメリットとデメリットをご紹介します。
1手元の現金を減らさずに済む
住宅ローンを頭金なしで組む最大のメリットが、多額の現金を使わずに住宅を購入できる点です。
住宅購入時には、頭金や諸費用以外にも、引っ越し費用や仮住まい費用、家具や家電の購入費用など、何かと出費がかさみます。
また、子どもが受験を控えていたり、車などの大きな買い物を検討していたりと、他にも大きな現金支出が予想される場合は、一定のキャッシュを確保しておくことが重要になるでしょう。
「住宅ローン=借金」と考えると、少しでも借入額を減らすべきだと考えがちですが、一定の現金を確保して、お金の流動性(=キャッシュフロー)を保っておくことは、急な出費が必要になった場合を想定した際、家計のリスクを抑える効果があります。
2住宅購入のタイミングを自由に決められる
住宅ローンを頭金なしで組むメリットの2つめは、自分の希望するタイミングで住宅を購入できる点です。
住宅を購入する際、頭金を貯めることを第一の目的としていると、資金が貯まっていないことがネックになり、良い物件を見つけてもなかなか購入に踏み切れない・・・というケースが出てきます。
たとえば、子どもの誕生や独立、親との同居など、ライフスタイルが大きく変化するタイミングは、今までの住まいを見直すことで、より快適な暮らしを手に入れるチャンスでもあります。また、住宅ローン金利も、世界経済の影響を受けて日々、上昇や下降をくり返しています。
このように、住宅の購入を検討するタイミングと、家の貯蓄状況とは、必ずしも一致するとは限りません。
「住宅ローンを頭金なしで組む」という選択肢を持っておくことで、頭金が充分に貯まっていない状態でも、「今、住宅を購入しておいたほうが良さそうだ」と感じたときに、行動を制限されずに動けるようになります。
3他のローンと比較して、低金利での借り入れができる
住宅ローンを頭金なしで組むもう1つのメリットは、他の借り入れ手段と比較して、住宅ローン金利が低いことです。
借り入れの際に、土地と建物に抵当権を設定する住宅ローンでは、住宅を担保とするため、多目的ローンや教育ローンといった無担保型のローンと比較すると、圧倒的に低い金利で資金を借り入れることができます。
たとえば、子どもの進学と住宅購入が重なった場合などは、子どもの進学費用のために教育ローンを検討するよりも、住宅ローンを頭金なしで組み、手元に残った現金を進学費用に充てたほうが、借入金利を低く抑えることが可能です。
1総返済額が増え、住宅ローン返済の負担が大きくなる
住宅ローンを組むためには、借入先の金融機関による審査に通過する必要があります。
頭金なしで住宅ローンを組む場合、「①頭金の分も借り入れる必要がある」「②適用される住宅ローン金利が高くなる」という理由から、頭金ありで組む場合と比較し、住宅ローンの総返済額が増え、毎月の返済負担が大きくなります。
この点は、頭金なしで住宅ローンを組む際にまず把握しておくべきデメリットといえるでしょう。
頭金なしで住宅ローンを組む場合は、総返済額や毎月の返済額がどれくらいになるのかを事前にしっかりとシミュレーションし、無理なく返済できる範囲で返済計画を立てることが大切です。
頭金なしの場合、適用される住宅ローン金利は高くなる
頭金なしの場合、適用される住宅ローン金利自体が、頭金ありの場合と比較して高くなります。
たとえば、フラット35では、頭金が1割以上の場合と、1割以下の場合とでは適用金利が異なり、頭金が1割以上の方が、低い金利が適用されます。
また、ネット銀行や都銀などの民間の金融機関でも、頭金がある場合とない場合とで適用金利が異なり、頭金がある方がより有利な金利で住宅ローンを組むことが可能です。
2住宅ローン審査が厳しくなることがある
頭金なしで住宅ローンを組む場合に気になることの1つが、金融機関の住宅ローン審査でしょう。
頭金なしの場合、物件に対する融資割合が増えるため、頭金ありの場合と比較して、住宅ローン審査が厳しくなる傾向があります。
ただし、住宅ローン審査では、契約者の年齢や年収、勤続年数、健康状態、過去の返済遅延情報など、ある程度、審査項目が標準化されており、条件をクリアできてさえいれば、「頭金なし」という理由で審査に落ちるケースは多くありません。
もし、住宅ローン審査に通りにくい場合は、配偶者との収入合算やペアローン、親子でのリレー返済などを利用して、審査のネックとなっている条件(年収など)をクリアできないか試してみるのも方法です。
3ほかの買主と競合した場合に不利になる可能性がある
同じ物件に対して複数の買主が購入の申し込みをするような場合、不動産会社や個人の売主が、頭金なしでの購入希望者よりも、頭金を準備している購入希望者を優先することがあります。
これは販売する側の考え方によることから、つねに「頭金なしだと不利になる」と決まっているわけではありません。ただし、複数の買い手がつきやすい人気エリアの物件や、競合性の高い物件などを購入する場合には、「頭金なし」が不利に働くケースもあることを把握しておくと良いでしょう。
頭金なしでの借り入れに対応したおすすめの住宅ローン
本チャプターでは、頭金なしでの借り入れに対応したおすすめの住宅ローンをご紹介します。各住宅ローンの特徴をチェックし、自分に合ったものを選びましょう。
14年連続シェアNo.1を獲得しているARUHI提供のフラット35 ※1。全国に130以上の店舗を展開し(※2023年3月末現在)、フラット35の借り入れ・借り換えに関する実店舗での相談に対応している。
ARUHI フラット35では、「ARUHI フラット35」と「ARUHI フラットα」を組み合わせることで、頭金なしでの借り入れに対応。頭金に相当する1割分を「ARUHI フラットα」で借り入れ、残り9割分を「ARUHI フラット35」で借り入れることで、フラット35は、融資比率9割以下の金利が適用され、フラット35のみで住宅ローンを組む場合と比較し、総返済額を抑えられる。
また、フラット35の借り入れ条件をクリアしていれば、自己資金なしで住宅ローンが組める点も、ARUHI フラット35の大きな魅力。
さらに、業界最低水準の住宅ローン金利を実現している※2 ほか、全国1,000以上の金融機関から返済口座を選択できる等、利便性の高いサービスを提供している。
ARUHI フラット35は自己資金なしで住宅ローンを組む場合、ぜひチェックしておきたい。
- 2010年度-2023年度統計、取り扱い全金融機関のうち借り換えを含む【フラット35】実行件数(2024年3月末現在、ARUHI調べ)
- 【フラット35】業界最低水準(ただしスタンダードタイプの場合)。ARUHI 調べ。
「ARUHI フラット35」+「ARUHI フラットα」の利用
頭金なしで 住宅ローンを組む方法 |
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数ある金融機関の中でも、トップクラスの実績と利用者からの高い満足度を誇る住信SBIネット銀行が提供するフラット35。
住信SBIネット銀行では、自己資金なしでもお得にフラット35を組める商品として「フラットパッケージローン」を提供。頭金に相当する1割分を「フラットパッケージローン」で組み、残り9割分を「フラット35 買取型(お借入割合90%以下)」で組むことで、フラット35に融資比率9割以下の金利が適用され、「フラット35 買取型(10割融資)」のみでフラット35を組む場合と比較し、総返済額を抑えられる。
フラットパッケージローンを利用することで、自己資金なしでも低水準の住宅ローン金利が適用され、お得にフラット35を利用できるのは、住信SBIネット銀行を利用する大きなメリット。
フラットパッケージローンの利用が、「買取型のフラット35」「新規借り入れ」に限定される点には注意が必要だが、自己資金なしでフラット35を組む場合、住信SBIネット銀行は有力な選択肢の一つだろう。
「フラットパッケージローン」の利用
頭金なしで 住宅ローンを組む方法 |
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頭金なしで住宅ローンを組む場合の注意点
頭金なしで住宅ローンを組むことは可能ですが、いくつか注意したいポイントがあります。 ここでは、頭金なしで住宅ローンを組む場合の注意点を見ていきましょう。
1家計が破綻しない範囲の借入額を設定する
頭金なしで住宅ローンを組む場合に、もっとも注意しなければならないのは、住宅ローンが家計を圧迫し、返済できなくなる事態を避けることです。前述の通り、頭金がないと借入額と月々の返済額が膨らむため、家計に占める住宅ローンの割合も大きくなります。
住宅購入当初は問題なく家計が回っていたとしても、子どもが成長して教育費がかかるようになると収支のバランスが崩れる家庭はめずらしくありません。
また、住宅を購入すると、固定資産税などの税金も発生するうえ、マンションでは設備費や修繕積立費などの追加費用が、一戸建てでは数年から十数年ごとの修繕費用が発生します。現役世代にとっては老後に向けた貯蓄も必要でしょう。
こうした未来に予想される支出を見積もったうえで、家計が耐えられる範囲内で借入額を決めるのが、住宅ローン選びの鉄則です。頭金なしの場合はもちろん、頭金を用意する場合であっても、返済額と家計のバランスを考慮することは欠かせません。
2物件売却のリスクが高まることを理解する
住宅ローンの頭金には、万一、住宅ローンが返済できなくなった場合に住宅を売却して債務を清算しやすくする効果もあります。住宅を売る場合、物件の価値よりも多くの住宅ローン残高があると、超過分を現金で支払わなければ売却することができません。
なお、住宅の販売価格には、ハウスメーカーや不動産会社の利益分が上乗せされています。つまり、建物本来の価値は、購入価格よりも少ないケースがほとんどでしょう。そのため、頭金を用意せずに、物件価格の全額を住宅ローンで借り入れると、必然的に売却時の建物価値よりも住宅ローンの残債のほうが大きくなり、売却リスクが高まります。
住宅ローンの頭金に関するQ&A
- Q1:住宅ローンを頭金なしで購入する場合、どうすればリスクを最大限抑えられるでしょうか?
- -A.住宅ローンを頭金なしで組む場合、どうしても毎月の返済負担が大きくなります。万一、住宅ローンの返済ができなくなった場合、住宅を売却することになりますが、その際に物件価格が大幅に値下がりしていると、重い負担を強いられます。
つまり、住宅ローンを頭金なしで組むリスクを最大限抑えるためには、値下がりしにくい物件を購入できるかどうかがキーポイントです。例えば駅から徒歩5分以内など駅近の物件であれば、値が落ちにくい傾向があります。
- Q2:住宅ローンの頭金を妻に出してもらう場合や親に出してもらう場合の注意点は?
- -A.住宅ローンの頭金を妻に出してもらう場合は、夫の単独名義にしてしまうと妻から資金を贈与されたことになり、贈与税がかかるケースがあります。住宅の金額が3,000万円だとして妻が600万円頭金を出した場合、登記する際、夫婦の共有名義とし、2割を妻、8割を夫とすれば、贈与税がかかりません。
また、親に住宅ローンの頭金を出してもらう場合は、一定金額に限り、贈与税を非課税とする仕組みがあります。物件の種類や贈与してもらう時期によっても金額が異なるため、詳細は国税庁の下記ページを確認すると良いでしょう。
まとめ
住宅ローンの借り入れには多額のお金が動きます。また、返済期間も長期に渡るため、無理なく返済できる、自分に合った住宅ローンを選ぶことが大切です。
住宅ローン選びで失敗しないためにも、特に初心者の場合は、事前に住宅ローンに関する基礎知識を身につけておくのがおすすめ。基礎知識を持っていることで、より賢い選択ができるようになります。
マイホームの購入に向けて住宅ローンの借入を検討している方は、本特集を参考に住宅ローンに関する基礎知識をチェックし、実際に住宅ローンを組む際に役立てましょう。