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住宅ローンの借り換えと繰り上げ返済はどちらを選ぶ?優先順位のつけ方を解説
- 住宅ローンの借り換え

住宅ローンの「借り換え」と「繰り上げ返済」はどちらが有利?
住宅ローンの総返済額を減らしたいとき、金利の低い住宅ローンに借り換えるか、現在のローンで繰り上げ返済を利用するかは悩ましい問題です。 「借り換えは費用もかかるので大変では?」「繰り上げ返済は何円から効果があるか?」「住宅ローン控除を受けている場合はどうする?」など、複数のポイントが気になる方も多いはず。
そこで今回は「住宅ローンの借り換えと繰り上げ返済はどちらが有利か」をテーマに、借り換えと繰り上げ返済のメリット・デメリット、どちらを選ぶか迷った場合の優先順位の付け方について解説します。
住宅ローンの借り換え・繰り上げ返済それぞれの特徴は?
借り換えと繰り上げ返済のメリット・デメリットを見ていく前に、まずは両者の特徴をチェックしましょう。
下表のように、借り換えと繰り上げ返済は、どちらも総返済額を減らす効果がある一方で、毎月の返済額や住宅ローン金利、手数料面では結果が異なります。
借り換え | 繰り上げ返済 | |
---|---|---|
総返済額の減額 | ◯ | ◯ |
毎月の返済額の減額 | ◯ | 返済額軽減型を選べば◯ (ただし総返済額の減額効果は期間短縮型よりも落ちる) |
住宅ローン金利 | 低金利の住宅ローンを選ぶことで低くできる | 変わらない |
手数料 | 多め (事務手数料、登記関連費用、火災保険料ほか) ※借り換え時の借入額に含められる |
少なめ (WEBからの一部繰り上げ返済は手数料無料の金融機関が多い) |
住宅ローン控除(住宅ローン減税)の適用 | 利用条件を満たすことで借り換え後も継続可能 ・控除期間は借り換え前の住宅ローンと合算される(借り換え前+借り換え後で13年) |
繰り上げ返済後も継続可能 ・適用金利が低い場合は、控除期間後に繰り上げ返済をしたほうが有利 ・繰り上げ返済により返済期間が13年以下となる場合は対象外に |
住宅ローンの借り換えと繰り上げ返済はどちらを選ぶ?優先順位のつけ方を解説
住宅ローンの借り換えのメリット・デメリット
住宅ローンの借り換えとは、他の金融機関からのローンで返済することで、住宅ローンの融資元を実質的に移す方法です。
現在の住宅ローンよりも低金利の住宅ローンを見つけた場合は、総返済額を減額できる可能性が高いため、借り換えを検討してみましょう。
住宅ローンの借り換えは、金利の差によっては、総返済額を抑えた上でさらに毎月の返済額も減らせます。
また、金融機関によっては、団信の追加保障(がんになった場合に住宅ローンの返済義務が免除されるetc.)を無料で提供しており、サービス面で有利になるケースも少なくありません。
ただし、借り換えに当たっては新しい金融機関の審査に通過する必要があります。諸費用(事務手数料、住宅ローン保証料、物件&土地の登記関連費用、火災保険料etc.)も新たに発生するため、書類の準備や費用面で繰り上げ返済よりも手間がかかる点がデメリット。
そのため、住宅ローンの借り換えがお得になるのは、「金利差1%以上、残り返済期間10年以上、ローン残高1000万円以上」の場合と言われています。
最近は手数料や保証料が安い金融機関もあるので、3つの条件のいずれかを満たしていれば、総返済額の減額を果たせる可能性が高いでしょう。
気になった住宅ローンは、金融機関の窓口に相談するか、シミュレーションを利用して総返済額や毎月の返済額、諸費用を試算してみましょう。
なお、住宅ローンの借り換えでは、金利タイプ(変動金利、固定金利など)を変更することも可能です。たとえば、固定金利から変動金利に変更すると、総返済額や月々の返済額は一気に減らせますが、変動金利は半年に1回、適用金利が見直されるため、今後の金利動向によっては徐々に金利水準が上がっていく可能性があります。金利タイプの変更(特に変動金利への変更)は、金利上昇のリスクを考慮した上で慎重に行いましょう。
- 借り換えのメリット まとめ
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- 金利差によっては総返済額の減額効果が大きい
- 総返済額と毎月の返済額の両方を減らせる
- 諸費用含めて借り入れできるため、手元資金が少なくても可能
- 団信の付帯保障や契約者特典などのサービスを拡充できる場合も
- 借り換えのデメリット まとめ
- 諸費用がかかる
- 借り換え先の金融機関の審査がある(転職や独立の直後は不利になりやすい)
- 繰り上げ返済よりも手間がかかる
- 金利タイプの変更は慎重に行うほうがベター
住宅ローンの繰り上げ返済のメリット・デメリット
住宅ローンの繰り上げ返済は、毎月の返済やボーナス返済とは別に、追加で返済を行い、元本を減らすことで利息分を軽減し総返済額を減らす方法です。
「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類の返済方法があり、毎月の返済額は変えずに返済期間を短くしたい場合は「期間短縮型」、返済期間はそのままで毎月の返済額を削減したい場合は「返済額軽減型」が向いています。
住宅ローンの繰り上げ返済は、現在、ほとんどの銀行がWEBから手続き可能で手数料もかかりません。借り換えのような審査もなく、手軽にできる点が繰り上げ返済のメリットです。
また、借り換えでは住宅ローンの契約そのものを乗り換えるため、現在の住宅ローンでがん保障や疾病保障を追加している場合は、借り換え先で新たに追加する必要があります。そのため、住宅ローン返済中に病気をして新しい保障への加入が難しい場合などは、繰り上げ返済が有利と言えるでしょう。
一方で、繰り上げ返済をすると現金が減るため、多額の繰り上げ返済には注意が必要です。出産や子どもの進学等、生活面で出費がかさむ時期は、繰り上げ返済を控えたほうが良い場合も。
また、借り換えとは異なり、繰り上げ返済の前後で金利は変わらないため、住宅ローンの返済が家計の負担となっている場合(毎月の返済にも負担を感じている場合など)の軽減効果は限定されます。
繰り上げ返済には、「返済期間を短縮するが毎月の返済額は変わらない」もしくは「毎月の返済額を減らせるが、トータルの返済額を減らす効果は少なめ」という2種類の選択肢しかないので、総返済額を大幅に減らしたい場合には向きません。
- 借り換えのメリット まとめ
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- WEBから返済できる金融機関が多く手続きが簡単
- 一部繰り上げ返済は手数料無料で対応する住宅ローンが多い
- 住宅ローン審査が不要で手軽にできる
- 契約者特典や団信の追加保障を継続できる
- 借り換えのデメリット まとめ
- 余裕資金が必要(生活費や教育費がかさむ時期は難しい)
- 返済の前後で金利は変わらない
- 総返済額を大きく減額したい場合には向かない
住宅ローンの負担を軽くするなら最初に「借り換え」、次に「繰り上げ返済」の順番で検討しよう
住宅ローンの負担を軽くしたい場合は、金利そのものを見直せる「借り換え」のほうが総返済額の減額効果が大きくおすすめです。
現在の住宅ローンよりも金利の低い住宅ローンを見つけたら、金融機関に問い合わせや相談をして借り換え結果を試算してもらいましょう。
WEBで契約手続きが完結する金融機関や、土日祝日も住宅ローンの相談が可能な金融機関も増えており、手間を抑えられます。
団信の疾病保障や追加保障もそれぞれの金融機関が力を入れているので、付加サービスにも注目してみましょう。
借り換えにおすすめの住宅ローン
住宅ローン金利の低さと団信の追加保障の手厚さに定評がある大手ネット銀行。金利タイプは変動金利型、期間固定金利型、フラット35(全期間固定型)を取り扱う。住宅ローン保証料や一部繰り上げ返済手数料は無料。また、団信保険料も無料(基本付帯)となる。
さらに、すべての病気やケガを保障する「全疾病保障」が無料(基本付帯)、50歳以下は一部のがん保障も無料となるなど、団信の追加保障をリーズナブルに付帯できる点が大きな魅力。
WEB申込コースでは、すべての契約手続きがLINEまたはWEBで完結する。事務手数料は借入額の2.2%(税込)となるものの、金利の低い住宅ローンを探している場合はチェックしておきたい。
金利 ※2024年12月実行金利
変動 | 年0.448%(通期引下げプラン)
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変動 | 年0.448%(通期引下げプラン)
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10年固定 | 年1.413%(当初引下げプラン) |
- 【新規・当初引下げプラン】表示金利は、最下限金利となります。(物件価格の80%以下で住宅ローンをお借入れの場合)
- 審査結果によっては、表示金利に年0.1%~0.3%上乗せとなる場合があります。
- 借入期間を35年超~40年以内でお借入れいただく場合は、ご利用いただく住宅ローン金利に年0.07%、40年超でお借入れいただく場合は住宅ローン金利に年0.15%が上乗せとなります。
基本情報
事務手数料 | 借入金額の2.2%(税込) | |||||||||||||||
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住宅ローン保証料 | 無料 | |||||||||||||||
一部繰り上げ返済手数料 | 無料 | |||||||||||||||
団信と追加保障 |
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完全オンラインでできる住宅ローン契約手続きと、団信のがん保障の手厚さが魅力のネット銀行。金利タイプは変動金利型と期間固定金利型を取り扱う。
住宅ローン保証料・一部繰り上げ返済手数料・団信保険料(基本保障)は無料。さらに、がんと診断された場合に住宅ローン残高が50%になる「がん50%保障団信」も金利上乗せなしで付帯できる。すべての団信には、4疾病保障(急性心筋梗塞・脳卒中・肝疾患・腎疾患で所定の状態となった場合)と全疾病保障(所定の入院日数を超えた場合)が付帯しており、上乗せ金利も低い。
金利面では期間固定型の水準が有利。事務手数料以外は諸費用もリーズナブルなのでシミュレーション結果も踏まえて検討すると良いだろう。
金利 ※2024年12月実行金利
変動 | 年0.479%(全期間引下げプラン)
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10年固定 | 年1.395%(当初期間引下げプラン) |
- 審査の結果によっては保証付金利プランとなる場合があり、この場合には上記の金利とは異なる金利となります。 金利プランが保証付金利プランとなる場合は、固定金利特約が3年、5年、10年に限定されます。
基本情報
事務手数料 | 借入金額の2.2%(税込) | ||||||||||||||
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住宅ローン保証料 | 無料
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一部繰り上げ返済手数料 | 無料 | ||||||||||||||
団信と追加保障 |
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繰り上げ返済のおすすめのやり方は余裕資金でこまめに
繰り上げ返済を優先させる場合は、返済開始から間もないほうが利息の軽減効果が大きくなります。そのため、まとまった資金が貯まるまで待つよりも、余裕資金ができた段階でこまめに返済していく方法がおすすめ。
利息の減額を効果的に狙うなら「期間短縮型」を、毎月のローン返済を少しでも軽くしたい場合は「返済額軽減型」を選択すると良いでしょう。
なお、住宅ローン以外のローン(奨学金、マイカーローンなど)の繰り上げ返済とどちらを優先すべきか迷った場合は、金利の高いもの(利息を多く取られるローン)から優先的に返済しましょう。
住宅ローン控除の効果は「借り換え」と「繰り上げ返済」でどう変わる?
住宅ローンを利用するに当たり、大半の方が住宅ローン控除(住宅ローン減税)を活用しているはず。
住宅ローン控除は、返済期間10年以上の住宅ローンがある場合に最長13年間、住宅ローン残高の0.7%分を所得税から減税できる制度です。
借り換えや繰り上げ返済によって、金利や返済期間が変わった場合、住宅ローン控除の扱いがどうなるか気になる方も多いでしょう。以下では、それぞれの住宅ローン控除の扱いを解説します。
借り換え時の住宅ローン控除の扱い
借り換え時の住宅ローン控除は、以下の条件を満たすことで引き続き住宅ローン控除が適用されます。
- 新しい住宅ローン等が当初の住宅ローン等の返済のためのものであることが明らかであること。
- 新しい住宅ローン等が10年以上の償還期間であることなど住宅借入金等特別控除の対象となる要件に当てはまること。
しかし、住宅ローン控除はあくまでも、最初に返済を始めた月から最大13年間適用される制度です。新たな住宅ローンに借り換えてから13年間ではない点に注意しましょう。
繰り上げ返済時の住宅ローン控除の扱い
繰り上げ返済を行う場合も、要件を満たしていれば住宅ローン控除を引き続き利用することができます。
ただし、繰り上げ返済の「期間短縮型」を選択した場合には注意が必要です。住宅ローン控除を受けるためには「住宅ローンの償還期間(返済期間)が10年以上であること」が要件になります。
そのため、繰り上げ返済によって、返済期間が最初の返済月から10年未満になる場合には、その時点で住宅ローン控除適用外になる点に注意しましょう。