住宅ローンの基礎知識家を買い替えたい人のために。高値売却のコツと住宅ローンのポイント

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家を買い替えたい人のために。高値売却のコツと住宅ローンのポイント

家の買い替え。住宅ローンが残っていても大丈夫?家を買い替えたい人のために。高値売却のコツと住宅ローンのポイント

家を買い替えたいけれども、今の家の住宅ローンがまだ残っている。買い替えはローンを完済してからのほうが良いのでは?……と、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

住宅ローンは20年、35年などの長期にわたって返済するケースが一般的です。この期間中に、子どもの誕生や独立、または高齢の親と同居など、大きなイベントが発生し、家族のライフスタイルが大きく変化することもあるでしょう。
住む人の生活が、住宅ローンの返済が終わるよりも早いタイミングで変わり、家の広さや立地などが、家族の状況にそぐわなくなれば、買い替えに対するニーズが高まるのも当然です。

不動産情報サイトを運営する株式会社シースタイルが実施したアンケート調査によると、家を買い替えた時点で住宅ローンの残債が「ある」と回答した人は、全体の40.3%。
じつに4割以上の人々が、住宅ローンの返済が残っていても家の買い替えに踏み切っていることがわかります。

買い替えの最大のポイントは、抵当権を抹消できるかどうか

家を買い替えたい人のために。高値売却のコツと住宅ローンのポイント

このように、住宅ローンの返済中に家を買い替えることは、決してめずらしくはありません。むしろ、家族のライフスタイルに合った住まいを手に入れ、生活利便性を高めるための有効な手段の1つと言えるでしょう。

ただし、住宅ローンとは本来、家を抵当に入れ、金融機関から資金(=今の家を購入する際に支払った資金)を借りている状態です。
抵当権が設定されたままの家や土地は、金融機関が差し押さえの権限を持っており、通常は自由に売りに出すことができません。
そのため、家を買い替える際には、家を売ったお金で現在の住宅ローンを完済し、抵当権の抹消手続きを取る方法が一般的。
つまり、今の家を売って新しい家を買う「買い替え」では、今の家の住宅ローンを完済し抵当権を抹消できるかどうかが、非常に重要なポイントとなるのです。

抵当権を抹消するためには、①住宅ローンの残債よりも高い価額で家を売る、②完済に足りない分の資金を、買い替えローンや貯蓄等で補う、という2つの方法があります。

とくに、今の家を少しでも高い価額で売ることができれば、住宅ローンの完済に有利であるばかりか、完済後に資金が余れば、新しい家の購入(諸費用や頭金など)に充てることもできるでしょう。

そこで今回は、家の買い替えの際に知っておきたい「家を高値で売却するためのコツ」と、売却後にも住宅ローンの残債がある場合の対処法、さらに、新しい家の購入で住宅ローンを借り入れるときの住宅ローン選びについて解説します。

住宅ローンの残債をなくすために!まずは知っておきたい高値売却のコツ家を買い替えたい人のために。高値売却のコツと住宅ローンのポイント

家を売却する場合、不動産会社に買主を探してもらい、内覧や価格交渉などを経て、買主と売買契約を結ぶ、というのが大まかな流れになります。

不動産売却の大まかな流れ

  1. 物件の査定
  2. 不動産会社選び(媒介契約)
  3. 内見・価格交渉
  4. 買主との売買契約
  5. 物件の引き渡し

今の家を少しでも高く売りたい場合に、もっとも重視したいのは、①の物件査定と、②の不動産会社選びです。

自宅を高値売却するコツ その1
物件の査定は複数の不動産会社に依頼しよう

家の売却価額は、その地域の不動産の需要と供給、不動産会社の持つ販売ネットワークなどによって変化します。
そのため、家を売る前の査定では、必ず、複数の不動産会社に査定依頼を出し、査定額を比較しましょう。複数の査定額を比較することで、自分の家を有利に売却できる不動産会社を見つけやすくなります。
また、複数の不動産会社から査定をもらえば、周辺地域の不動産の相場もつかむことが可能。査定額の妥当性なども判断しやすくなるでしょう。
最近は、複数の不動産会社に一括で査定を依頼できるサイトがあるので、このような一括査定サイトを利用する方法もおすすめです。

おすすめの不動産一括査定サイト

すまいValue

すまいValue

「野村不動産」「東急リバブル」「住友不動産販売」「三菱地所」「三井不動産」「小田急不動産」の国内大手不動産6社が提携・運営する不動産一括査定サイト。6社合計の成約件数は年間10万件以上(2015年実績)、合計店舗数は全国に830店舗以上(2017年4月時点)。売却力・集客力ともに定評のある大手不動産会社を中心に、査定を依頼することができる

このサイトへ行く

HOME4U(ホームフォーユー)

HOME4U(ホームフォーユー)

NTTデータグループが運営する不動産一括査定サイト。全国900社の不動産会社から最大6社に一括で不動産の無料査定を依頼できる。大手から中小までの不動産会社を網羅しているため、全国展開する不動産会社と地域密着型の不動産会社の両方から査定を取得できる点がメリット。査定実績は累計30万件(2018年1月)。国内初の不動産査定サイトとして信頼度も高い。

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自宅を高値売却するコツ その2
不動産会社は「得意分野」と「相性」で選ぼう

家を買い替えたい人のために。高値売却のコツと住宅ローンのポイント

売却を依頼する不動産会社は、査定を取った中から、1社、または複数社を選ぶのが一般的です。
「高い査定額を提示してくれた不動産会社」、「担当者の好感度が高かった不動産会社」など、不動産会社選びの基準は人それぞれでしょう。
不動産会社を選ぶ際には、①自分の家と類似した物件での売却実績があるか、②査定額の根拠をきちんと説明してくれるか、③担当者との相性、の3つのポイントを重点的にチェックしてみるのがおすすめ。
売却実績には、その不動産会社の「得意分野」が如実に反映されます。
また、査定額の根拠が明確であることも、その不動産会社が、売りたい家と類似した物件を数多く手がけている証拠となるでしょう。
担当者との相性も、売却時の満足度を左右する重要なポイントです。不明点などを気軽に相談できるか、報告などのやりとりがスムーズに行える相手かどうかをチェックしてみましょう。

それ以外の要素、たとえば、不動産会社の規模で「大手不動産と中小の不動産会社のどちらが良いか」といったことは、取り扱う物件や地域によっても異なり、一概に言うことはできません。大手の不動産会社は販売網や宣伝力の面で圧倒的な強みがありますが、必ずしも、すべての地域・すべての物件に精通しているとは限らず、地域に密着した中小規模の不動産会社のほうが、良質の顧客情報を持っているケースもあります。

どの不動産会社に売却を依頼するかを決めたあとは、選んだ会社と「媒介契約」を締結します。媒介契約にはいくつかの種類があり、買主の探し方や契約期間などによって選択することができます。
たとえば、信頼できる不動産会社にじっくり買主を見つけてもらいたいのであれば、一社のみに売却を依頼する「専属専任媒介」や「専任媒介」。複数の不動産会社に競合してもらい、幅広い選択肢の中から買主を見つけたい場合は「一般媒介」を選択すると良いでしょう。

媒介契約の種類

専属専任媒介 専任媒介 一般媒介
契約する不動産会社 1社のみ 複数社*1
売主側で買主を探す ×
不動産会社からの報告 1週間に1回以上
(法定義務)
2週間に1回以上
(法定義務)
法律上の規定なし
(任意で報告を求めることは可)
契約期間 3ヶ月間 法律上の規定なし
レインズ*2登録 契約後5日以内 契約後7日以内 登録義務なし

*1 明示型と非明示型の2種類あり。「明示型」…仲介依頼中の不動産会社情報を他の不動産会社にも共有、「非明示型」…他社との契約状況を共有する義務はない
*2 REINS…Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)。国土交通大臣所管の不動産データベース。登録された不動産情報を、会員不動産会社間で共有できる

自宅を高値売却するコツ その3
内覧では物件の第一印象アップを心がける

買主に家を見てもらう内覧などで、家の第一印象をアップを心がけることも大切です。
たとえば、室内の掃除や片付け、外回りなどの整理整頓。修繕箇所やリフォーム済みの箇所がある場合は、その部分の説明。住宅性能評価・耐震基準適合証明なども準備しておくと良いでしょう。
家の第一印象は、買主の購買意欲を大きく左右します
不動産会社の中には、売却物件に対して無償のホームクリーニングを提供しているところもあるので、そのようなサービスの有無も確認してみると良いでしょう。

家を売っても住宅ローンが残る場合はどうする?残債への対処法2選家を買い替えたい人のために。高値売却のコツと住宅ローンのポイント

不動産会社に査定を依頼すると、今の家のおおよその売却価額を把握することができます。
売却価額の概算が住宅ローンの残高(残債)を上回っていれば、家を売ったお金で住宅ローンを完済(=抵当権を抹消)できるため、家の買い替えもスムーズに進めることができるでしょう。
一方で、家の売却価額が住宅ローンの残債を下回る場合は、不足分を補填しなければ、今の家の抵当権を抹消することができません。
住宅ローンの残債が残る場合の対処法としては、①現金でカバーする方法、②ローンでカバーする方法、の2種類があります。

住宅ローンの残債への対処法 その1
現金でカバーする(貯蓄や親からの贈与など)

残債がある場合の対処法として最初に検討したいのは、貯蓄などの現金でカバーする方法です。
家の買い替えを計画している場合は、買い替え資金として、あらかじめ一定額を貯蓄しておくと良いでしょう。
また、親に一定の資産がある場合や二世帯住宅に買い替える場合などは、親からの贈与も検討してみましょう。父母や祖父母からの住宅取得資金の贈与には、最高3,000万円まで※の非課税枠が設けられており、上手に活用したい制度の1つです。
※非課税枠(非課税限度額)は、贈与のあった年度や消費税率、住宅の種類により異なる

住宅ローンの残債への対処法 その2
ローンでカバーする(買い替えローンなど)

残債を現金でカバーすることが難しい場合は、ローンを利用することで残債を補うことができます。
これは買い替えローン(住み替えローン)と呼ばれ、新しく購入する家の住宅ローンに元の家のローンの残債を上乗せする、住宅ローンの借入方法の一種です。

買い替えローンでは、もとの家のローン残債が加わる分、新居の本来の価値よりも多くの資金を借り入れることになります。
普通に物件を購入して住宅ローンを組むケースと比較すると、借入額が大きくなる=返済額や返済期間が増加するので、きちんと返済できる範囲に収まっているかどうかをチェックすることが大変重要です。

買い替えローンは、メガバンクや大手の地方銀行などが提供しており、ネット銀行での取り扱いは少なめ。媒介契約を結んだ不動産会社などから、提携先の金融機関を紹介してもらう方法が一般的です。
なお、現在、住宅ローンを借り入れている金融機関が買い替えローンに対応している場合は、そちらに相談をしてみても良いでしょう。

おすすめの買い替えローン

みずほ銀行 みずほ買い替えローン

みずほ銀行 みずほ買い替えローン

みずほ銀行が提供する買い替えローン。満20歳以上71歳未満を対象に、50万円以上1億円以内、1年以上35年以内の融資に対応している。変動金利、固定金利選択型、全期間固定金利の3種類を提供。事務手数料は32,400円、保証料は融資額と借入期間により異なる。団信保険料およびネットバンキングによる一部繰上返済手数料は無料。
買い替えローンの中でも手数料が低く、金利の選択肢が幅広い。返済方式では、元利均等返済と元金均等返済を選択できる。

みずほ銀行 みずほ買い替えローン

元の家の住宅ローンを完済できる場合は、新しい住宅ローンを賢く選ぼう家を買い替えたい人のために。高値売却のコツと住宅ローンのポイント

今の家を売却したお金で住宅ローンを完済できる場合は、新居の住宅ローンのみを検討すれば良いので、住宅ローン選びが、よりシンプルになります。

住宅ローンを選ぶ際のポイントは、①金利の低さ、②諸費用、③繰り上げ返済などの利便性、④付帯保障、⑤契約者サービス、など。
とくに①、④、⑤については、金融機関のあいだでサービスの拡充が進んでいるため、新たに住宅ローンを検討する際には、ぜひ比較したいポイントです。

たとえば、ネット銀行など比較的新しい金融機関が取り扱う住宅ローンは、メガバンクや地方銀行の住宅ローンと比較すると、金利が低めに設定されており、ローン保証料や疾病保障が無料になる等、有利な点が少なくありません。
最近は、長期固定金利型「フラット35」に対応したネット銀行も増えており、変動金利から全期間固定型まで、幅広い金利タイプに対応している点も特徴です。

おすすめの住宅ローン

auじぶん銀行 住宅ローン

auじぶん銀行 住宅ローン

変動金利型と当初固定金利型を取り扱う。住宅ローンの申し込みから契約までネットで完結する仕組みを実現しており、最短10日で契約手続きが完了。契約書に貼付する印紙代も不要とするなど、ネット銀行ならではの高い利便性を誇る。
住宅ローン保証料・団信保険料・一部繰上返済手数料は無料。また、がんと診断された場合に、住宅ローン残高が2分の1になる「がん50%保障団信」も、金利上乗せなしで付帯できる。

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住信SBIネット銀行 住宅ローン(WEB申込コース)

住信SBIネット銀行 住宅ローン

変動金利型、固定金利特約型、フラット35を取り扱う。auじぶん銀行と同じく、ペーパーレスでの住宅ローン契約に対応している。
住宅ローン保証料・団信保険料・一部繰上返済手数料は無料。また、すべての疾病・ケガで12ヶ月間働けない状態が続いた場合に、住宅ローン残高がゼロになる「全疾病保障」を金利上乗せなしで付帯可能。

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住宅ローンが残っていても家の買い替えは可能。無理のない資金計画で上手に買い替えよう家を買い替えたい人のために。高値売却のコツと住宅ローンのポイント

家を買い替えたい人のために。高値売却のコツと住宅ローンのポイント

家を買い替えたいとき、現在の住宅ローンが足かせになっている、と感じる方は少なくありません。
毎月の返済額や家計の貯蓄額などを見て、買い替えなどとても無理……と思っている方も多いでしょう。
しかし、家の資産価値と住宅ローンの残債は、必ずしもイコールではありません。繰り上げ返済をこまめに行ってきた方や、地価が上昇しつつあるエリアに住んでいる方であれば、住宅ローンの残債よりも、家の価値のほうが高い場合も多く、買い替えという選択肢は現実味を帯びてきます。

家の買い替えを成功させるポイントは、今の家の資産価値を正しく知り、できる限り高値で売却すること。そして、今の家を売ったお金で住宅ローンを完済(=抵当権を抹消)し、新しい家の住宅ローンを上手に選ぶことです。

今よりも、もう少し住みやすい家に移りたい……と考えている方は、まずはご自身の家の価値を査定してみて、住宅ローンの残債と比較することから始めてはいかがでしょう。

著者 長尾 尚子

フリーランスライター。得意分野は、育児・教育、住宅ローン、保険、金融、エンタメ等、幅広い。子ども3人を育児中のママでもある。
【資格】消費生活アドバイザー、FP2級